東京大学の研究グループは、磁性半金属である「テルル化クロム」の特殊な磁性を、ゲート電圧で大きく変調することに成功した。スピントロニクスデバイスへの応用が期待される。
東京大学の研究グループは2024年4月15日、磁性半金属である「テルル化クロム」の特殊な磁性を、ゲート電圧で大きく変調することに成功したと発表した。
磁性半金属は、バンド構造におけるバンド交差点が磁性と関連し、多様な機能性を示すことから、スピントロニクスデバイスへの応用が期待されている。特に、ゲート電圧によって強磁性転移温度や磁気異方性、磁気輸送特性などを制御できる磁性体ゲートデバイスが注目されている。
研究グループは今回、テルル化クロムに着目。イオンのインターカレーションを活用したゲート技術を適用することで、テルル化クロムの磁性をゲート電圧で大きく変調することに成功した。
実験では、ゲート電圧を細かく変化させて、テルル化クロム中に存在する伝導電子の数を精密に制御した。この結果、「強磁性転移温度の大幅な上昇」や、「面直磁気異方性と面内磁気異方性の完全な切り替え」、異常ホール効果と呼ばれる「磁気輸送現象の符号反転」といった変化を観測した。
特に注目しているのは、ゲート電圧に対して性質が非単調に切り替わることだ。中間のゲート電圧領域で磁気異方性が面内に切り替わり、強磁性転移温度が特異的に増大するという振る舞いを確認した。研究グループは、中間領域でバンド交差点付近の伝導電子が、ゲート効果に大きく寄与しているとみている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.