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「金属元素を使わない」 カーボン系材料のみで相補型集積回路を開発電子ゴミの問題を抜本的に解決

東京大学とNTTの研究チームは、パイクリスタルや東京工業大学とともに、カーボン系材料のみで構成された「相補型集積回路」を開発した。金属元素を含まない材料で開発した電子回路が、室温大気下で安定に動作することも確認した。

» 2024年04月01日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

4ビット信号の出力デバイスが室温大気下で安定に動作

 東京大学とNTTの研究チームは2024年3月、パイクリスタルや東京工業大学とともに、カーボン系材料のみで構成された「相補型集積回路」を開発したと発表した。金属元素を含まない材料で開発した電子回路が、室温大気下で安定に動作することも確認した。

 電子デバイスには、重金属などの有害物質や金などの希少元素が含まれている。このため、「電子ゴミ」と呼ばれる電子デバイスの廃棄物については、「含有する有害物質の処理」や「希少元素のリサイクル」といった対策をとる必要がある。一方で、増加する電子ゴミに対し、抜本的な対策も不可欠となっている。例えば、有害物質や希少資源を含まない電子回路の開発である。

 研究グループは、有害物質を含まない電池と電子回路に関する研究成果を2022年に報告した。東京大学ではこれまで、印刷技術による成膜が可能で高いキャリア移動度を有するp型有機半導体材料「C9-DNBDT」やn型有機半導体材料「PhC2-BQQDI」の開発に取り組んできた。

 そして今回、電極や絶縁層にも金属元素を使わず、全てをカーボン系材料のみで構成する電子回路の開発に取り組んだ。具体的には、有機トランジスタを駆動するためのカーボン電極とそのパターニングプロセスを新たに開発。ポリイミドフィルム基板やパリレン絶縁層という高分子材料と組み合わせ基板や絶縁層、半導体、電極、配線の全てに、カーボン系材料を用いた「有機トランジスタおよび、その相補型回路」の作製に成功した。作製した電子回路について元素分析や組成分析を詳細に行ったところ、電子回路中の金属元素は50ppm(0.005%)未満と、極めて低い値であった。

全てにカーボン系材料を用いた相補型インバーター回路の偏光顕微鏡写真、回路図と真理値表および、異なる電源電圧(5〜30V)における電圧トランスファーカーブとシグナルゲイン 全てにカーボン系材料を用いた相補型インバーター回路の偏光顕微鏡写真、回路図と真理値表および、異なる電源電圧(5〜30V)における電圧トランスファーカーブとシグナルゲイン[クリックで拡大] 出所:NTT他

 さらに研究グループは、これらの成果を通信用回路へ適用するため、「リングオシレータ」や、「インバーター(NOT回路)」「Dフリップフロップ」「マルチプレクサー」を開発した。そして、これらを接続し64個のp型およびn型トランジスタからなる、使い捨て可能な4ビットID出力電子回路を作製し、室温大気下でも安定に動作することを実証した。

全カーボン製のアナログ・デジタル回路で構築した4ビットID出力デバイスの回路図と、4ビットID=0101における各段の出力信号 全カーボン製のアナログ・デジタル回路で構築した4ビットID出力デバイスの回路図と、4ビットID=0101における各段の出力信号[クリックで拡大] 出所:NTT他

 今回の研究成果は、東京大学大学院新領域創成科学研究科の渡辺和誉特任助教、渡邉峻一郎准教授、竹谷純一教授とNTTの研究チームおよび、パイクリスタル、東京工業大学らによるものである。

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