京都工芸繊維大学などの研究チームは、PLLA(ポリ(L-乳酸))からなる電界紡糸ファイバー膜が、主に正負両極性の真電荷で帯電した「エレクトレット」であり、優れた疑似圧電特性を示すことを解明した。
京都工芸繊維大学や産業技術総合研究所、国士舘大学らによる研究チームは2024年4月、PLLA(ポリ(L-乳酸))からなる電界紡糸ファイバー膜が、主に正負両極性の真電荷で帯電した「エレクトレット」であり、優れた疑似圧電特性を示すことを解明したと発表した。また、ファイバー膜内部における帯電真電荷の分布モデルや発電電荷量の数理モデルも提案した。
電界紡糸と呼ばれる方法で作製した極細ファイバー膜は、一般的に直径が数十ナノメートル〜数マイクロメートルのファイバーで構成される。極めて軽く軟質で通気性に優れている。圧力を加えるとひずみが生じて電圧が発生する疑似圧電特性を示すことから、ウェアラブル圧力センサーの発電部材として注目されている。ただ、原料が原油であったり、フッ素を含んだりするプラスチックなどは、環境汚染などの点で課題もあった。
今回用いたPLLAは、バイオマスから製造できる環境にやさしい循環型の材料である。これまでも、PLLAからなる電界紡糸ファイバー膜が疑似圧電特性を示すことは分かっていたが、その発現メカニズムや帯電特性については十分に解明されていなかったという。
実験に用いた試料は、下部電極をコーティングしたガラス基板上に、電界紡糸PLLAファイバー膜を直接製膜した。PLLAファイバー単糸の平均直径は約0.71μm、ファイバー膜の平均膜厚は132μmで、ファイバー膜の平均密度は約0.127g/cm3となった。なお、用いたPLLAのペレットは、約1.21g/cm3(実測値)という密度であった。作製したファイバー膜の帯電特性を調べたところ、その起源は主に真電荷帯電由来であることが分かった。
次に、帯電真電荷のファイバー膜内部における帯電真電荷の分布を調べた。作製した電界紡糸PLLAサブマイクロファイバー膜を下部電極基板からはがし、ファイバー膜の表面と裏面の電位をそれぞれ測定。同膜の総帯電電荷量についても測定した。これらの結果を基に、ファイバー膜内部における帯電真電荷の分布モデルを見い出した。また、ファイバー膜へ電極を近づけたり押し込んだりしたときの発電電荷量についても数理モデルを提案した。
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