ソシオネクストは2022年9月、年平均成長率を10%台後半、営業利益率を10%台前半から半ばとする中期財務目標を公表しているが、2023年度の実績では、年平均成長率が37%(2021年度を起点として算出)、営業利益率が16.1%といずれも達成したことになる。肥塚氏は、「新規量産売り上げが当初予想を上回ったことや『特需』に加え、為替が寄与した」と語っていた。
2023年度第4四半期の設備投資は前四半期比では減少しているが、大型商談に伴う先端開発の拡大によってレチクル、IPなどの投資が増加基調にあるという。減価償却費もこの投資増を反映して増加傾向にあるとしている。
なお、貸借対照表をみると、2024年3月末の現預金残高は697億円と前年から246億円増となっている。肥塚氏は、「高水準のレチクル、IP投資にもかかわらず、棚卸資産の減少や売掛金の回収が進んだことなどによって大きく増加している」と説明している。
在庫水準は顧客要望による先行手配の在庫が大きく減少したことで、全体の棚卸資産残高は255億円にまで減少。通常品保有月数(通常品棚卸資産金額÷次期3カ月平均の製品原価金額見通し)は3.6カ月となった。肥塚氏は、「棚卸資産についてはさらに適正化を進め、2024年度下期には3カ月以下の水準になるようコントロールしていきたい」としている。
顧客要望の先行手配在庫の減少に伴い、流動資産および負債も減少。2024年3月末の自己資本比率は70.1%と「ほぼ以前の水準に戻っている」という(2023年3月末は56.6%)
売り上げの内訳をアプリケーション別にみると、2023年度は自動車分野の他、『特需』による売り上げ増を含むデータセンターネットワーク向け分野の比率が拡大している。NRE売り上げは前年に続いて自動車分野の比率が前年度の34%から48%と大きく拡大。肥塚氏は、「自動車分野の商談が好調で、これらの商談に代わる開発が進んでいる」と説明している。
なお、同社はこのアプリケーション別の内訳について、これまで事務機器、FA(ファクトリーオートメーション)、産業機器、計測器/検査装置などの「産業機器」と、センサー、既存民生機器などの「その他」をまとめて「産業機器他」としていたが、今回から産業機器とその他を分けて記載することとなった。肥塚氏は、「産業分野でも先端テクノロジーの活用、ソリューションSoC需要が拡大する傾向にある。産業分野をフォーカスエリアと位置付けていることを明確にするため、この分類とした」と説明している。
地域別では、売り上げにおける中国の比率が39%に拡大した。ただ、今後この中国比率は、「特需」製品の売り上げ減少に伴い減少していく見込みだという。NRE売り上げでは、米国が48%と引き続き高い水準となっている。
プロセス別では、売り上げ/NRE売り上げともに先端テクノロジー向けの比率がさらに高まっている。特にNRE売り上げについては3〜7nmプロセスが71%となったが、同社によれば、3nmおよび5nmプロセスだけで既にNRE売り上げの50%を超えているという。
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