広島大学は「Medtec Japan 2024」(2024年4月17〜19日/東京ビッグサイト)に出展し、AI(人工知能)画像解析技術を応用して、アトピー性皮膚炎や大腸がんの診断を支援する研究などの成果を展示した。
広島大学 半導体産業技術研究所(旧:ナノデバイス研究所)は、「Medtec Japan 2024」(2024年4月17〜19日/東京ビッグサイト)に「生体医歯工学共同研究拠点」のメンバーとして出展し、深層学習などのAI(人工知能)技術を用いた画像診断など、最新の研究成果を展示した。
生体医歯工学共同研究拠点は、生体医歯工学分野の先進的共同研究を推進し、若手人材の育成や、生体材料/医療デバイス/医療システムの実用化促進を目的として2016年に設立された連携研究機関だ。メンバーは、広島大学 半導体産業技術研究所、東京医科歯科大学 生体材料工学研究所、東京工業大学 未来産業技術研究所、静岡大学 電子工学研究所で構成されている。
広島大学は、日本医療研究開発機構(AMED)プロジェクト「アレルギー性皮膚疾患の病態における発汗異常の解明と治療法の開発」として、アトピー性皮膚炎の診断支援に向けて、AI画像解析技術を用いた発汗異常の定量的な解析や、皮膚微細構造の自動画像解析技術の研究をしている。
研究では、皮膚表面の画像から皮膚微細構造(キメの細かさ)を数秒で識別できるAI画像解析技術を開発した。通常、アトピー性皮膚炎の症状が認められる腕の画像(サイズは4mm×3mm)から直径40μm以上の汗を検出して、大きさを計測するためには、専門家でも約30分を要する。今回開発した技術では、AIを活用することで専門家と同等精度を維持しつつ、識別時間を大幅に短縮できるという。
発汗システムは、体温調節の役割を担っていることが知られている他、皮膚の水分量保持や自然免疫担当器官である可能性が考えられている。しかし、自然免疫担当器官である可能性についての研究は始まったばかりで、特に皮膚疾患発症との関係性についてはほとんど解明されていない。AI画像診断支援により、短時間で皮膚微細構造を識別できるため、発汗異常などの継続的な調査や原因解明に貢献する。
広島大学は、大腸Narrow Band Imaging(NBI:狭帯域光観察)拡大内視鏡ガン診断支援の実現に向けて、深層学習を用いたNICE/JNET(The Japan NBI Expert Team)分類に基づく大腸内視鏡画像診断技術の研究を行っている。
NBIとは、2つの短い波長の光を粘膜に当てることで、粘膜表層の毛細血管や微細模様を鮮明に映し出す内視鏡技術だ。ガンやその周囲では、正常な粘膜とは異なる毛細血管や微細模様が見られるため、ガンの発見/診断がしやすくなる。
NICE分類とは、病変の色調、微笑血管模様、表面模様の3項目を中心に病変の進行度を3段階で分類する方式で、JNET分類とは、NBI拡大所見を診断指標として病変の進行度を4段階で分類する方式だ。
研究では、大腸NBI拡大内視鏡画像データを基に、病変の進行度をJNET分類を用いてAIで定量化/識別する分類器を開発した。これにより、大腸がんの進行度を考慮した上で、医師の経験に近い診断支援が可能になる。実験では、160症例/480個の大腸NBI画像において、90%以上の精度で分類に成功したという。
広島大学のブース担当者は、Medtec Japanへの出展について「毎年のように出展している。生体医歯工学共同研究拠点は、さまざまな科学分野の研究者が集まっているため、それぞれの知識を生かしながら共同研究をしている。Medtec Japanには、研究成果の社会実装に向けて、企業との接点を増やす狙いがある」とコメントした。
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