東北大学の研究グループは、東京大学と共同で岩塩型NbO(酸化ニオブ)の合成に成功した。得られた岩塩型NbOは超伝導の性質を示し、転移温度は最高7.4Kであった。
東北大学大学院工学研究科の神永健一助教らによる研究グループは2024年5月、東京大学と共同で岩塩型NbO(酸化ニオブ)の合成に成功したと発表した。得られた岩塩型NbOは超伝導の性質を示し、転移温度は最高7.4Kで従来の擬岩塩型NbOに比べ高い値となった。
超伝導技術は、電力伝送や医療機器、量子コンピュータなどの分野で利用されている。ただ、超伝導状態を実現するには極低温環境が必要になるため、利用分野は限られていた。こうした中、高温下でも超伝導状態を実現できる物資の開発が期待されている。
NbOは、岩塩型から25%ずつのNb原子とO原子が欠けた擬岩塩構造によって安定している。しかも、擬岩塩型NbOの転移温度は1.38Kで、超電導現象も示す。一方で、岩塩型NbOは結晶の形が変わると、電気の流れやすさが大きく変化する特性がある。ただ、従来のプロセスでは合成が難しかったという。
今回の研究ではパルスレーザー堆積法を用い、岩塩型NbOを薄膜として合成することに成功した。擬岩塩構造の原子配置をわずかに変化させ、厚みがnmレベルの薄膜を合成することで、安定化させることができた。既に量子コンピュータなどに採用されている窒化ニオブ(NbN)の転移温度は17.3Kである。岩塩型NbOとNbNは構造的に類似性があるため、岩塩型NbOの転移温度も、NbNと同等の10K以上に高められる可能性があるとみている。
今後、岩塩型NbOについて薄膜化や線材への加工技術を確立できれば、超伝導デバイスや高磁場磁石への材料展開が期待できるとみている。
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