新車を購入する人々にとって、ディスプレイサイズは購入判断の指標の一つだ。OLEDディスプレイは「真の黒」の実現をはじめとする性能向上が認識されたことで、ハイエンド車への搭載がますます増加している。
新車を購入する人々にとって、その車の技術コンテンツとイノベーションを示す最初の指標の一つになっているのが、ディスプレイのサイズと数量だ。ディスプレイサイズは、購入判断をけん引する新たな馬力となりつつある。内燃機関や電気、ハイブリッドなど、搭載されているエンジンの種類に関係なく、ディスプレイサイズが自動車の性能に関する認識に影響を及ぼす。
第一印象は良くも悪くも克服することが難しいため、自動車メーカーにとって、HMI(Human-Machine Interface)ディスプレイに関してできるだけ良い印象を与えることがますます重要になってきている。OLEDディスプレイ技術は、確実に最高の第一印象を与える方法を提供するだけでなく、ユーザーとコックピット設計者の両方に真のメリットをもたらすことができる。
韓国ディスプレイ産業協会(KDIA:Korea Display Industry Association)が最近発表したレポートによると、世界の車載ディスプレイ市場は、年平均成長率(CAGR)7.8%で伸び、2022年の88億6000万米ドル規模から、2027年には約126億3000万米ドル規模に達する見込みだという。車載用OLEDディスプレイは、こうした成長をけん引する要素の一つとされている。OLEDの市場シェアは、2022年にはわずか2.8%だったが、2027年までには17.2%に拡大すると予測されている。
以下に、車載用OLEDディスプレイ技術の成長をけん引するさまざまな要素について見ていきたい。
最近までは、液晶ディスプレイ(LCD)技術が車載ディスプレイの主流だった。消費者市場で成熟した実績あるこの技術は、車載用途向けとして改良されてきた。
スマートフォンからPC用モニター、TVに至るまで、現代の消費者市場は既に、高品質なビジュアルと薄型フォームファクターを実現するOLEDディスプレイへの移行を開始している。また自動車業界も、同様の理由と自動車特有の理由から、OLED技術の導入を進めているところだ。実際、OLED技術の本質的な特性の多くは、車載ディスプレイアプリケーション向けとして非常に魅力的だ。
OLEDは、発光型ディスプレイ技術であるため、ピクセルがオフの時には発光せず、“真の黒”を実現する。一方LCDは、バックライトユニットからの光を遮断するという原理を採用しているため、ダークグレーにはなるが“真の黒”にはならない。LCDメーカーはこの欠点を克服すべく、ミニLEDアレイを採用して、ローカルディミングを実行したり、ゾーンのバックライトを黒画素でオフにしようとしている。この手法は、コントラストを改善することはできるが、ピクセルの粒度が不十分なために、ブルーミングやハローイングなどの望ましくない影響をもたらす可能性がある。さらに、ミニLEDアレイや電子制御のためにレイヤーを追加することで、システムの厚みや重量、コストが増加する。こうした側面は、スクリーンサイズが拡大すればするほど重要になる。
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