Niobiumの最初のチップは、GlobalFoundriesの12nm世代の低消費電力プロセスノードで製造する。なお、Globalfoundriesは米国の半導体支援政策の一つである「CHIPS法(CHIPS and Science Act)」で、15億米ドルの資金を獲得することが決まっている。
Yoder氏は、「より高度なプロセス技術に移行する余地は確実にあるが、まだその決断を下す時ではない。現在の性能レベルにおいて、金融業界や保険業界、ヘルスケア業界など多くのアプリケーションから優れた洞察を得ており、2024年後半に実施する概念実証を通じて得られるフィードバックによって、さらに多くのアプリケーションの開発に求められる次のレベルに到達するために、アーキテクチャで何をすべきかを理解できると考えている」と語った。
Niobiumのアクセラレーターは、DSPに似た高度な並列アーキテクチャを備え、MACユニットは独自の命令セットアーキテクチャに基づいている。
NiobiumのCPO(最高製品責任者)を務めるJorge Myszne氏はEE Timesに「当社の設計は、最初からFHE向けを想定していて、これによって大きな違いを生み出している。当社はこの技術の開発に着手して間もないため、成長の余地は大いにある。1000倍の性能向上は間違いなくゲームチェンジャーになり得る。多くのアプリケーションやソフトウェア上で行われた概念実証を見てきたが、本番環境に移行しようとすると遅すぎて、機能があっても性能が足りないという状況だった。われわれのアクセラレーターによって、こうしたユースケースを全て開放することができる」と語った。
Myszne氏は、「Niobiumがまだ考えてもいないユースケースが他にもあるはずだ」と述べる。
FHE採用の大きなハードルとなり得るのはソフトウェアだろう。Niobiumは、2024年末に終了するDPRIVEプロジェクトの第3フェーズの一環として、ソフトウェアスタックの開発に取り組んでいる。
Yoder氏は、「当社にはかなり魅力的なソフトウェアスイートがあると考えているが、それは必ずしもアプリケーションに関連したものではない。コンパイラの最適化は続けていくが、時間がたつにつれて、顧客から『アプリケーション側でより多くのことを行いたい』という要望も出てくると予想される。それに応えるべく、特定のアプリケーションを開発するサードパーティーのソフトウェア会社を擁するエコシステムの構築に着手している」と述べている。
Myszne氏によると、Niobiumのスタックは既に、利用可能なFHEライブラリに接続しているという。
Myszne氏は、「現時点では4つのFHEスキームがあり、当社のアクセラレーターはそれら全てで動作するように設計されている。4つのスキームは基本的に異なるアプリケーション向けに最適化されている」と説明する。1つはバイナリ演算用に設計されており、主にブロックチェーンに使用する。もう1つは近似計算用で、AI(人工知能)に使用する。他の2つは厳密な計算を使用し、その他のアプリケーションに使用する。「当社はスキームにとらわれず、誰とでも協力できる体制を取っていく」(同氏)
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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