東北大学は、ナノメートルサイズのダイヤモンド(ナノダイヤモンド)結晶をシリコン振動子上に固定し、光検出磁気共鳴(ODMR)法を用いて、振動子上の応力を観測する技術を開発した。
東北大学大学院工学系研究科の戸田雅也准教授らによる研究グループは2024年8月、ナノメートルサイズのダイヤモンド(ナノダイヤモンド)結晶をシリコン振動子上に固定し、光検出磁気共鳴(ODMR)法を用いて、振動子上の応力を観測する技術を開発したと発表した。単結晶ダイヤモンドを用い、結晶内の量子状態と機械振動を結合した「量子×電気機械」デバイスの開発につながる技術とみている。
ダイヤモンドは、量子センサーとしての応用に加え、量子状態を読み書きできる量子情報の担体として期待されている。ダイヤモンド結晶内の格子欠陥である「窒素−空孔中心(NVC)現象」により、磁場や温度、圧力に反応して蛍光の強度が変化する。この特性を生かし、磁場センサーや温度センサーといった用途に用いられている。宇宙や地中など過酷な環境でも利用できる高い信頼性が、ダイヤモンドの強みにもなっている。
ダイヤモンドは多くの特長を備えているが、シリコンとダイヤモンドの接合には課題もあった。このため、ダイヤモンドがMEMSの材料として活用されることはこれまで少なかった。大面積化や加工性といった点も課題の1つとなっていた。
研究グループは今回、シリコン製振動子の振動をダイヤモンドのODMRで観測する技術を開発した。この技術はダイヤモンド結晶内のNVCを用いた磁気共鳴センシングに基づいている。磁気共鳴による量子状態の変化から、微小機械による力(応力)として検出する。そのために今回は、シリコン上へナノダイヤモンドの微粒子をまばらに噴霧し、SiO2(二酸化ケイ素)スパッタ層によって、Si 表面に固定された単一ナノダイヤモンドを有する「片持ちはり型フォースプローブ」を開発した。
微小機械の動的な振動を観測するため、ストロボスコープの原理を活用した。振動変位を定めてダイヤモンドの蛍光強度を観測することで、NVCに加わる圧縮応力や引張応力が加わった状態を定常的に計測できるという。実験ではナノダイヤモンドの結晶軸と静磁場を調整し、ODMRスペクトルのピークシフトとカンチレバーの振動による応力強度との相関を調べた。
この結果、ODMRスペクトルのピークシフトにより、シリコン製片持ちはりの振動による表面応力を検出できることが分かった。シリコン製振動子のねじり振動でもピークシフトを観測できたという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.