東北大学の研究グループは、2層スプリットリング共振器を3次元的に不規則配置した「3次元バルクメタマテリアル」を開発した。6G(第6世代移動通信)に向けたメタマテリアルとして、屈折率特性をさらに向上させた。
東北大学の研究グループは2024年7月、2層スプリットリング共振器を3次元的に不規則配置した「3次元バルクメタマテリアル」を開発したと発表した。6G(第6世代移動通信)に向けたメタマテリアルとして、屈折率特性をさらに向上させた。
東北大学は、加工が容易で幅広い屈折率特性を備えた3次元バルクメタマテリアルの開発を、2022年3月に報告した。これまでは、メタマテリアルの単位構造として1層のスプリットリング共振器を含んでいた。今回はこれを、2層のスプリットリング共振器に変更した。これによって、優れた加工性を維持しつつ、屈折率特性をさらに向上させた。
具体的には、1層構造に比べて単位体積当たりの共振器密度が増大し、周波数0.34THz付近で屈折率が1THz当たり2.314も変化することを確認した。この屈折率変化率は、従来の3次元バルクメタマテリアルに比べ1.25倍である。しかも、2層のスプリットリング共振器を配置する密度を変えることで、屈折率変化率が調整できることを実証した。
高い屈折率を持つ三次元バルクメタマテリアルでレンズを作製すれば、焦点距離が短いレンズや薄いレンズを作ることができ、装置の小型軽量化が可能となる。また、メタマテリアルの共振波長帯では、屈折率が大きく変化する高い屈折率分散特性を示すという。波長に応じて異なる角度で屈折するプリズムを作製すれば、テラヘルツ波を波長ごとに分けるための分光器を実現できる。
開発したメタマテリアルは、金を用いた2層のスプリットリング共振器がシクロオレフィンポリマー(COP)に内包された粉体として供給する。大きさが数百μm程度のメタマテリアルを含む樹脂製粉体を液状樹脂に混ぜて、型に流し込み凝固させれば、任意形状で所望の屈折率特性を持つ3次元バルクメタマテリアルが作製できる。
開発した3次元バルクメタマテリアルは、透明樹脂のCOP中にメタマテリアル単位構造が3次元的に方向依存なく分散している。今回は、直径が16mm、厚みが1.3mmの3次元バルクメタマテリアルを製作した。周波数0.315T〜0.366THzにおいて、屈折率を1.577〜1.459まで変化させることに成功したという。
屈折率変化率は、メタマテリアル粉体の密度Dが増加すれば直線的に増える。今回の実験によれば、D=25%で0.525、D=50%で1.089、D=100%では2.314という結果になった。
今回の研究成果は、東北大学大学院工学研究科ロボティクス専攻の金森義明教授、Ying Huang(イン ホワン)特任助教、大学院生(研究当時)の木田喬仁氏、大学院生の脇内駿氏、岡谷泰佑助教、猪股直生准教授らによるものである。
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