メディア

北海道大ら、水系亜鉛イオン電池の正極材料を開発リチウムイオン電池を置き換える

北海道大学と東北大学および、カリフォルニア大学ロサンゼルス校は、亜鉛イオン電池用の正極材料を開発した。これにより、水系亜鉛イオン電池でリチウムイオン電池と同等か、それ以上の高いエネルギー密度と出力密度を実現することが可能となる。

» 2024年08月23日 11時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

高エネルギー密度と高出力密度の達成が可能に

 北海道大学と東北大学および、カリフォルニア大学ロサンゼルス校は2024年8月、亜鉛イオン電池用の正極材料を開発したと発表した。これにより、水系亜鉛イオン電池でリチウムイオン電池と同等か、それ以上の高いエネルギー密度と出力密度を実現することが可能となる。

 亜鉛金属を用いた電池は、安全性が高く低コストの電池として注目されている。ただ、これまで開発された正極材料だと、現行のリチウムイオン電池に匹敵するような高いエネルギー密度を実現するのが難しかったという。例えば、マンガン酸化物は動作電位が高く、Mn4+/Mn2+の2電子反応を使うことで高いエネルギー密度を発揮するといわれている。ところが、実際には反応が十分に進行せず、1電子反応しか利用できなかった。

 そこで今回は、スピネル型亜鉛マンガン複酸化物「ZnMn2O4」の極小ナノ粒子を「アルコール還元法」という溶液プロセスで合成した。合成した粒子のサイズは平均5nmと小さく、ZnMn2O4極小ナノ粒子がグラフェンに担持された複合正極材料を得ることができた。

開発した材料の電子顕微鏡画像 開発した材料の電子顕微鏡画像[クリックで拡大] 出所:北海道大学

 得られた複合正極材料の亜鉛イオン電池正極特性を評価したところ、2電子反応に相当する充放電が進行することを確認した。ZnMn2O4重量当たり600Wh/kgに相当するという。出力特性にも優れていることが分かった。

 今後、ZnMn2O4極小ナノ粒子と炭素材料の複合化を最適化すれば、現行のリチウムイオン電池と同等かそれ以上のエネルギー密度を有する安全性の高い蓄電池を実現できるとみている。さらに、電極構造の改良などにより、1000回以上の長期サイクルも可能とみられる。

開発した材料の特性を評価した結果 開発した材料の特性を評価した結果[クリックで拡大] 出所:北海道大学

 今回の研究成果は、北海道大学大学院理学研究院の小林弘明准教授と松井雅樹教授、東北大学多元物質科学研究所の本間格教授、カリフォルニア大学ロサンゼルス校博士後期課程の勝山湧斗氏、リチャード・ケイナーディスティングイッシュトプロフェッサーらによるものである。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.