線幅7.6nmの半導体微細加工が可能 高分子ブロック共重合体:東工大らが開発(2/2 ページ)
こうして得られたブロック共重合体について、小角X線散乱(SAXS)測定と透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、ミクロ相分離構造の構造形態とその周期長を調べた。この結果、合成したPS-b-(PGMAF-r-PMMA)は線幅10nm以下に相当するラメラ構造を形成していることが分かった。
また、見かけのFlory-Hugginsの相互作用パラメータ(χeff)を推定した。これにより、官能基の導入量を増やせば「χeff」が増加することを確認した。これは、「導入された極性基の効果に加え、ヒドロキシ基で生じた水素結合により、PGMAF-r-PMMAブロック内の引力相互作用が増大したため」と分析している。
研究グループは、表面処理したシリコン基板上にPS-b-(PGMAF-r-PMMA)薄膜を設け、加熱処理によりミクロ相分離構造を形成した後に特性を評価した。原子間力顕微鏡(AFM)を用いた薄膜表面観察で指紋状の構造を確認、周期長12.3〜18.6nmの垂直ラメラ構造が形成されているのが分かった。ラメラ構造界面は薄膜内部でも空気界面に対し、垂直に配向しているという。実験では、周期長15.1nmというラメラ構造の配列制御を行い、線幅7.6nm相当の線状構造を形成することに成功した。
誘導自己組織化の模式図と化学パターンの有無により得られる構造の違いを示したAFM位相像[クリックで拡大] 出所:東京工業大学他
今回の研究成果は、東京工業大学物質理工学院材料系の早川晃鏡教授、畠山歓助教、難波江裕太准教授、前川伸祐大学院生および、東京応化工業の佐藤和史氏、太宰尚宏氏、瀬下武広氏らによるものである。
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