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プラズマ加工による半導体素子の劣化を定量評価素子の性能と信頼性の向上に寄与(1/2 ページ)

産業技術総合研究所(産総研)は名古屋大学低温プラズマ科学研究センターと共同で、プラズマ加工による半導体素子へのダメージ量を、簡便かつ短時間で定量評価することに成功した。

» 2024年08月29日 15時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

擬定常状態光伝導度測定法で、加工ダメージを簡便かつ短時間で評価

 産業技術総合研究所(産総研)電子光基礎技術研究部門の布村正太上級主任研究員らは2024年8月、名古屋大学低温プラズマ科学研究センターと共同で、プラズマ加工による半導体素子へのダメージ量を、簡便かつ短時間で定量評価することに成功したと発表した。

 シリコントランジスタは、微細加工技術の進化により高性能化や高集積化に対応してきた。ただ、プラズマ加工によるダメージが、素子性能を劣化させ信頼性が低下するという課題があった。この課題を解決するには、プラズマダメージの発生メカニズムを解明する必要がある。しかし、十分には対応できていなかったという。

 産総研はこれまでも、半導体素子のダメージ量を評価する技術を開発してきた。今回は、シリコンウエハー上に形成されたシリコン酸化膜のプラズマ加工を対象に、ダメージ量を簡便に定量評価するための技術開発に取り組んだ。

 研究チームは、真空容器内で四フッ化炭素(CF4)プラズマを生成し、電極上に置いたシリコン酸化膜(SiO2)を加工した。加工時のプラズマの発光スペクトルから、フッ化炭素活性種(CF3)やフッ素活性種(F)の存在を確認した。また、光子やフッ化炭素イオン(CF3+)などが存在していることも分かった。

プラズマ加工の模式図とプラズマの発光スペクトル プラズマ加工の模式図とプラズマの発光スペクトル[クリックで拡大] 出所:産総研

 実験では、シリコン表面近傍の加工ダメージについて、その形成要因を明確にするためプラズマ加工後の酸化膜について、その厚み(残膜の厚み)を変えてシリコンのキャリア寿命を測定した。この測定にはシリコン太陽電池の研究開発で用いられている「擬定常状態光伝導度測定法」を用いた。

 加工ダメージは、酸化膜表面に活性種やイオン、光子が衝突し各種反応を介することによって発生する。測定の結果、キャリア寿命は残膜が薄いと短くなって、より多くの加工ダメージがシリコン表面近傍に発生することが分かった。

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