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AI需要で盛り上がるデータセンター冷却の新技術水がいらない液冷や固体冷却も(1/3 ページ)

AI(人工知能)ワークロードの需要に対応するためにデータセンターが増加する中、冷却システムの重要性も増している。今回、水がいらない液冷や固体冷却など、近年登場してきた革新的新技術をまとめた。

» 2024年09月13日 11時30分 公開
[Gary HilsonEE Times]

 AI(人工知能)ワークロードの需要に対応するためにデータセンターが増加する中、システムを冷却する革新的な方法の開発がますます重要になってきている。

 チップの冷却に関して利用可能なソリューションは、システムの冷却またはシステムからの熱の除去に分けられる。

電力効率を高めてコストを大幅に抑える電源モジュール

 Infineon Technologies(以下、Infineon)のパワーおよびセンサーシステム部門でパワーICおよびコネクティビティシステム担当ゼネラルマネジャーを務めるAthar Zaidi氏は、米国EE Timesのインタビューに対し、「管理しなければならない熱源は2つある。1つは、コンピューティングエンジンであるプロセッサ自体だ。また、プロセッサ周辺の電力管理ソリューションからも多くの熱が発生する。その効率は100%ではない。電圧や電流の変換を行うたびに効率は低下し、その分の熱が発生する」と語った。

 Zaidi氏は、「電力管理と冷却は密接に関係している。熱を除去するには冷却ソリューションが必要だが、それにもエネルギーが必要である。つまり、これはもろ刃の剣だ。コンピューティングおよび、そのための電力供給でも電力が消費され、さらにシステムから熱を除去するためにも電力が消費される」と指摘した。

 Zaidi氏は、「冷却と電力管理は密接な関係にあり、データセンターのエネルギーフットプリントを管理する上で冷却は非常に重要だ。データセンターを建設するには、施設の利用可能なエネルギー量の割り当てを定めた許可が必要となるため、エネルギーフットプリントはデータセンターの建設場所にも影響を与えうる」と述べている。データセンター所有者が予算の範囲内で何をするかは所有者次第だが、その範囲によって総所有コスト(TCO)と投資収益率が決まる。

 Infineonは2024年2月、電気性能と熱性能の両方を向上させたデュアルフェーズ電源モジュール「TDM2254xDシリーズ」を発売した。同モジュールによってデータセンターはGPUの高い電力需要に対応し、より高効率の運用とTCOの大幅な削減を実現できるという。

 コンピューティングの高密度化が進むにつれ、冷却および熱管理ソリューションを小型化する必要がある。TDM2254xDシリーズのサイズは約10mm2で、高さは8mm以下だ。Zaidi氏は、「電力に関しては、効率だけでなく熱管理も重要だ」と述べている。

Infineonのデュアルフェーズ電源モジュール「TDM2254xDシリーズ」 Infineonのデュアルフェーズ電源モジュール「TDM2254xDシリーズ」[クリックで拡大] 出所:Infineon

 同氏は、「AIワークロードに関しては、電力がますますボトルネックになっている。これまでコンピューティングがボトルネックとされていたのは、消費電力が1kWを超えるものがなく、電力がボード上で処理できていたからだ」と付け加えた。

 「しかし、NVIDIAの『Grace Blackwell』のようなプラットフォームでは、消費電力が3.3kWに達しているため、空冷だけでは不十分だ。全体を液冷する必要がある。それが電力管理のトポロジーを定義する」(Zaidi氏)

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