サマリウム−鉄−窒素焼結磁石の高性能化に成功:高密度化に向けた焼結助剤を開発
日本特殊陶業と産業技術総合研究所(産総研)は、新たに開発した焼結助剤と磁石合成プロセスを用い、高性能の「サマリウム−鉄−窒素焼結磁石」を作製する技術を開発した。EV(電気自動車)に搭載される高効率モーター用磁石などに適用していく。
日本特殊陶業と産業技術総合研究所(産総研)は2024年9月、新たに開発した焼結助剤と磁石合成プロセスを用い、高性能の「サマリウム−鉄−窒素(Sm2Fe17N3)焼結磁石」を作製する技術を開発したと発表した。EV(電気自動車)に搭載される高効率モーター用磁石などに適用していく。
Sm2Fe17N3磁石は、高い磁石特性を有することから、ポストネオジム−鉄−ホウ素(Nd-Fe-B)磁石として期待されている。ただ、性能向上に必要となる高密度化がこれまで難しかったという。
日本特殊陶業と産総研は、2022年4月に設立した「日本特殊陶業−産総研カーボンニュートラル先進無機材料連携研究ラボ」において、Sm2Fe17N3焼結磁石の開発に取り組んできた。
そして今回、Sm2Fe17N3磁石で磁化を下げずに緻密化効果を得るため、焼結助剤としてマグネシウムやカルシウムなど周期表第二族に属する元素を含む合金を開発した。しかも、適切に微粉化した焼結助剤合金とSm2Fe17N3粉末を均一に混合した混合粉末を用い、結晶の向きを一方向にそろえて焼結するプロセスを開発した。これによって、Sm2Fe17N3永久磁石の高密度化に成功した。
焼結助剤なしと、新開発の焼結助剤を添加して焼結させたSm2Fe17N3焼結磁石断面の電子顕微鏡像[クリックで拡大] 出所:産総研他
研究グループは、Sm2Fe17N3磁石の磁化曲線についても調べた。新開発の焼結助剤を添加して焼結させたSm2Fe17N3磁石は焼結助剤なしと比べ、残留磁化が10%以上、最大エネルギー積は20%以上もそれぞれ向上した。これらの結果から、磁化を向上させるためには、多くの粉末を高充填し永久磁石相を増やすのが有効であることを実証した。
焼結助剤なしと、新開発の焼結助剤を添加して焼結させたSm2Fe17N3焼結磁石の磁化曲線[クリックで拡大] 出所:産総研他
- 小型で強力な「BLT型超音波エミッター」を開発
日本特殊陶業と日本大学理工学部の研究グループは、小型で強力な空中超音波を出力できる「BLT(ランジュバン型振動子)型超音波エミッター」を共同で開発した。
- プラズマ加工による半導体素子の劣化を定量評価
産業技術総合研究所(産総研)は名古屋大学低温プラズマ科学研究センターと共同で、プラズマ加工による半導体素子へのダメージ量を、簡便かつ短時間で定量評価することに成功した。
- 性能低下を回避して長寿命を実現 小型酸素センサー
産業技術総合研究所(産総研)は、テクノメディカや東北大学、富士シリシア化学および、筑波大学らと共同で、新規開発の参照極を用い、連続使用が可能な「長寿命小型酸素センサー」を開発した。
- 東北大ら、クロム窒化物で高速な相変化機能を発見
東北大学と慶應義塾大学、漢陽大学校(韓国)、産業技術総合研究所(産総研)らの研究グループは、クロム窒化物(CrN)が高速な相変化によって電気抵抗が大きく変化することを発見した。CrNは環境に優しく動作電力を低減できることから、相変化メモリ(PCRAM)の情報記録材料として期待されている。
- セルロース樹脂を用い半導体型CNTを選択的に抽出
京都工芸繊維大学、奈良先端科学技術大学院大学および、産業技術総合研究所(産総研)は、優れた温度差発電性能を有する「半導体型CNT(カーボンナノチューブ)」の抽出方法を開発した。抽出剤としてはアルキル化セルロースを用いた。
- 基準電圧源を取り外し可能な「高精度DMM」を開発
産業技術総合研究所(産総研)は、基準電圧源の脱着が可能な「高精度デジタルマルチメーター(DMM)」を、エーディーシーと共同で開発した。DMM本体は別の基準電圧源を内蔵している。このため、取り外した基準電圧源を校正中であっても、DMMは生産工程でそのまま利用できる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.