インドとシンガポールの両首相は、インドの半導体エコシステムを共同で拡大/支援していくための協定に調印した。これはインドの半導体産業が急激に勢いを増している兆候だといえる。インドでは、国内の半導体エコシステム構築に向けた取り組みが活発化し、特にインドの半導体業界関係者が積極的に行動を起こしている。
インドとシンガポールの両首相が2024年9月、インドの半導体エコシステムを共同で拡大/支援していくための協定に調印した。これは、インドの半導体産業が急激に勢いを増している兆候だといえる。また、Kaynes SemiconとTower Semiconductorは、製造/組立工場への追加投資を発表している。
そして、インドのナレンドラ・モディ首相が2024年9月に、ニューデリー郊外のノイダで行われた「SEMICON India 2024」(会期2024年9月11〜13日)の開会式に出席したことも、インドにおける半導体の重要性を示すもう1つの兆候だといえる。SEMIのプレジデント兼CEO(最高経営責任者)を務めるAjit Manocha氏は、台湾で2024年9月4〜6日に開催された「SEMICON Taiwan 2024」に関連する声明の中で、「インドにとって今回は重要な節目となる。半導体業界がサプライチェーンのレジリエンスを強化して、急成長を遂げるエレクトロニクス市場に対応し、地域の豊富なエンジニア人材を採用しようとしている中、インドは世界的な半導体ハブとして発展しつつある」と述べていた。
筆者は1990年代以降、インドの将来性についてたびたび報じてきたが、今回、同国のバンガロールを訪れた際、これまでのどの時期とも異なるものを感じた。生産能力の構築や人材育成のほか、長年にわたってTIやIntel、Qualcommなどのチップ設計に携わってきた経験を、インド国内での半導体製造へと転換していくということが非常に現実味を帯びているように見えたのだ。特にパワーエレクトロニクスや自動車、産業向け、など、インド国内で需要が急増している分野ではそれが顕著だ。そしてCPO(Co-Packaged Optics)の製造能力もある。
これまで筆者が会ってきた人たちの間には、インド出身のIntel元経営幹部らのネットワークがある。彼らは当初米国で勤務していたが、インドに戻って政府のイニシアチブや民間の景気刺激策によって活躍の場を得ている。ここで、彼らの専門知識や革新的なアイデアを展開してインドの半導体エコシステムを構築する準備が整えられているのだ。
このような意欲は、FlexAIのマネージングディレクターであるSuresh Subramanyam氏に会った際にも感じられた。同氏は、長年にわたり培ってきた先端パッケージングの専門知識をインドに持ち込み、同国内でエコシステムを構築するための方法を見つけ出そうと取り組んでいる人物だ。
さらに、L&T Semiconductor TechnologiesのChief Development Officer(最高開発責任者)を務めるSanjay Gupta氏は、バンガロールで筆者が面会した時、明らかに楽観的な見方をしていた。同社は、大手コングロマリットL&Tの傘下の新しいファブレス半導体スタートアップである。Gupta氏は、主要な垂直市場をターゲットに、実績あるグローバル半導体メーカーと競合するSoC(System on Chip)/ASSPを開発するためのエンジニアリング/製品開発チームを立ち上げる計画があると強調した。
こうしたグローバルプレーヤーの1社として挙げられるのが、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)だ。同社のインド拠点でカントリーヘッド兼エンジニアリング部門担当シニアディレクターを務めるMalini Moorthi氏と面会した際、インドが本気でチャンスをものにしようとしていることがよく分かった。同氏は、カナダのトロントから帰国後に現職に就いてまだ1年半ほどだが、エンジニアリングチームを大きく成長させているだけでなく、未来の人材を育成し、インド国内でルネサスの知名度を挙げるために大学や学術界との関係を強化するなど、自らの任務を遂行している。Moorthi氏は、大学やスタートアップとの連携を実現するために、業界のベテランであり起業家であるChitra Harihan氏をその取り組みのリーダーとして招聘した。
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