図6は、GlobalFoundries(以下、GF)の四半期業績をグラフにしたものである。
IBMのプロセス技術をベースに持つGFは、かつては最先端プロセスを追求するトップグループの1社だった。しかし2018年に7nmおよび10nmプロセスの開発を断念。最大顧客だったAMDは製造委託先をTSMCに切り替えた。最先端プロセスを断念してからは、投資の負担が軽減され営業利益も徐々に安定しつつあるが事業を拡大できず、UMCと同様、TSMCとの格差が開いてしまった。最近では車載分野に注力し始め、STMicroelectronics向けに車載MCUを手掛けるなどの動きが見られる。
以上がファウンドリー業界上位5社の現状である。TSMCに対抗すべく、最先端プロセスを追求しているのはSamsungだけ。規制対象のSMICは最先端装置の導入が困難であり、他の2社は最先端を追いかけないことで収益の安定を図ろうとしている。つまり、Samsungが最先端で苦戦するということは、TSMCがますます強くなり、TSMC一強体制がより盤石になることを意味している。TSMCの強みは、自社ブランドを持たない純粋なファウンドリー会社であること、常に最先端プロセスを実現し、大手ファブレス各社のニーズに応えていること、この2点を守り続けていることに尽きる。他のファウンドリーは最先端プロセスを追いかけられないし、最先端を追いかけるSamsungは自社ブランドを持つIDM(垂直統合型デバイスメーカー)である。Samsungは最先端で苦戦しているが、仮に苦戦していなくても、自社ブランドを持っていることでファブレス顧客から安心して製造を委託できるのか、疑わしいケースが多い。
トップ10から名前が消えてしまったIntelだがファウンドリー事業を分社することを2024年9月に発表し、ファウンドリー事業に独立性を持たせる方針をようやく打ち出した。Intelから独立するファウンドリー会社が、どのような資本でどのような経営戦略を持つのかはまだ分からないが、立ち上がればTSMCも無視できない相手になる可能性が高い。
日本のRapidusも、まだ実績はゼロだが「最先端を目指す純粋なファウンドリー会社」ということで、TSMCに対抗し得る条件を備えている。
Samsungは「ファウンドリー事業の分社は考えていない」とコメントしているが、現状の体制でどこまで続けられるのか、その見直しはあり得るのか。ファウンドリー業界における健全なシェア争いを実現させるためにも、これらの点に注目したいものである。
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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