情報通信研究機構(NICT)とNEC、東北大学およびトヨタ自動車東日本は、公衆網(5G/LTE)とローカル5Gによるハイブリッドなネットワークを活用し、移動体との間で安定した無線通信を可能とする「SRF無線プラットフォームVer.2」の実証実験に成功した。
情報通信研究機構(NICT)とNEC、東北大学およびトヨタ自動車東日本は2024年11月、公衆網(5G/LTE)とローカル5Gによるハイブリッドなネットワークを活用し、移動体との間で安定した無線通信を可能とする「SRF(Smart Resource Flow)無線プラットフォームVer.2」の実証実験に成功したと発表した。
NICTとNECは、製造現場の無線化を推進する「フレキシブル・ファクトリー・プロジェクト」活動を2015年から行ってきた。この中で、異なる無線通信をシームレスに切り替えることで、安定した通信を可能とするSRF無線プラットフォームの開発に取り組んできた。
2017年には、この技術に関心を示す企業らと「フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)」を設立し、技術仕様の標準化を進めてきた。そして2023年1月に、SRF無線プラットフォームの技術仕様書Ver.2を策定し公開した。Ver.1では無線LANを対象としていたが、Ver.2ではこれに加え「キャリア5G」や「ローカル5G」「LTE」も対象としたことで、ハイブリッドなネットワークを利用することが可能となった。
今回は、同Ver.2の有効性を製造現場で実証するため、トヨタ自動車東日本の宮城大衡工場内において、公衆網とローカル5Gをシームレスに切り替えながら移動体(自動搬送車)との無線通信を行い、その品質を評価した。具体的には、SRFデバイス搭載の自動搬送車を用い、約163m離れた工場Aと工場Bの間を往復させて、その間の通信品質を測定した。ローカル5Gの周波数帯は4.8G〜4.9GHzである。実験では、自動搬送車に搭載されたSRFデバイスが、受信した信号強度に基づいて適切なデータ送信経路を判断し、ローカル5Gと公衆網をシームレスに切り替えた。
実験の結果、SRF無線プラットフォームを用いない場合、ローカル5Gの圏外では自動搬送車との通信が遮断された。その後、公衆網に切り替えて通信を再開するまでに約9.75秒も要した。また、ローカル5Gが通信遮断する直前には、往復遅延が最大で約1.01秒となった。
これに対し、SRF無線プラットフォームを適用すれば、ローカル5Gから公衆網への切り替えを少し早めに行うことで、経路切り替え時の通信遮断時間を約0.14秒に短縮でき、安定かつ継続して通信が行えることを確認した。工場Aに戻るときも、ローカル5Gの受信信号強度が良くなると公衆網からローカル5Gに切り替え、通信を継続できたという。
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