岐阜大学とソフトバンク、情報通信研究機構(NICT)、名古屋工業大学らの研究グループは、300GHz帯テラヘルツ(THz)無線伝送において、自己修復特性を有する「ベッセルビーム」を用いることで、障害物がビーム中心を横切った場合でも通信が可能なことを実証した。
岐阜大学工学部の久武信太郎教授やソフトバンク、情報通信研究機構(NICT)の諸橋功研究マネジャー、名古屋工業大学大学院工学研究科の菅野敦史教授らによる研究グループは2023年12月、300GHz帯テラヘルツ(THz)無線伝送において、自己修復特性を有する「ベッセルビーム」を用いることで、障害物がビーム中心を横切った場合でも通信が可能なことを実証したと発表した。
Beyond 5G/6G(第5/第6世代移動通信)では、100Gビット/秒以上の伝送速度を実現するため、300GHz帯の周波数利用が期待されている。300GHz帯は、5Gで用いられる28GHz帯に比べ、より広い周波数帯域が利用できる。その半面、波長が短くビーム幅が狭くなるため、鳥などの障害物によってビームが遮断され受信パワーが減少する。場合によっては通信エラーが生じたり通信が切断されたりすることもあるという。
研究グループは今回、300GHz帯においてベッセルビームを生成し、ベッセルビーム断面内に設けた障害物によって乱されたビーム形状が、伝搬とともに自己修復され、障害物による通信エラーの発生が、従来のガウスビームより少ないことを確認した。
通信実験では、PPG(パルスパターン生成器)で生成した1Gビット/秒の信号をテラヘルツ波に重畳して送信。金属体(SMAプラグアダプター)と誘電体(7.5mm角の立方体)による障害物は、レンズから49mmの位置に配置し、障害物を自動ステージでX軸方向に掃引した。そして受信した信号のビット誤り率(BER)をBERテスターで測定した。
この結果、ガウスビームの場合、障害物の位置によって受信パワーが大きく減少した。一方、ベッセルビームの場合は、障害物の位置に関われず受信パワーの低下は小さいことが分かった。また、ガウスビームは障害物がビームの中心に近づくほどBERは高くなり、最終的に通信が切断された。これに対しベッセルビームの場合、障害物の位置に関わらずBERは3.8×10−3以下となり、通信が維持されることを確認した。
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