スマートフォンの高機能化に伴い、搭載するリチウムイオン電池の大容量化も加速。金属外装電池の採用が増加傾向にあるが、そこでは電池の発火等のリスクへの対策強化などがますます重要になっている。エイブリックは、金属外装電池採用に際して高まる要望に対応する、新たな保護ICを開発したという。今回、同社の開発担当者に話を聞いた。
スマートフォンの高機能化に伴い、搭載するリチウムイオン電池の大容量化も加速。金属外装電池の採用が増加傾向にあるが、そこでは電池の発火等のリスクへの対策強化などがますます重要になっている。エイブリックは2024年10月、金属外装電池採用に際して高まる要望に対応する、新たな保護ICを開発し、販売を開始したと発表した。今回、開発担当者に話を聞いた。
今回、エイブリックが開発したのは、1セルリチウムイオン電池の保護ICである「S-821A/1Bシリーズ」だ。1セルリチウムイオン電池は、スマホやウェアラブル機器などをはじめ、さまざまなアプリケーションに用いられている。
特に近年、スマホの高機能化に伴う搭載リチウムイオン電池の大容量化が加速しているが、ここでは従来の絶縁タイプよりも単位体積当たりの電池容量が多い、金属外装を用いるリチウムイオン電池が増加傾向にあるという。ただ、金属外装は電池の負極電位となっていることから、電池の出力端子の短絡保護を実現するためには、電池の正極側の電流経路を遮断する保護手段(ハイサイド保護)が必要となる。
S-821A/1Bシリーズは、充放電制御を行うNチャンネル MOSFETを電池の正極側へ配置することで電池の正極側の電流経路を遮断するハイサイド保護を実現。電池パック側とシステム側のグランドレベルを共通化することで、システム設計を簡素化できるとしている。
S-821A/1Bシリーズでは、3倍昇圧のチャージポンプを内蔵している点も大きな特長だ。これによってNチャンネル MOSFETの駆動電圧を高くすることが可能となり、MOSFETのオン抵抗低減が実現。急速充電など大電流が必要な場合であってもMOSFETの発熱が抑えられ、充電中の安全性を向上できるとしている。
開発担当者は、「3倍の昇圧回路は当社として初の試みだ。また、FETのゲート・ソース間の耐圧を超えないよう内部でFETへの出力をモニターし続け、ある電圧を超えたら昇圧をやめるというレギュレーションの回路も新たに設計した。3倍の昇圧回路を内蔵したハイサイド保護ICは、確認した限り競合にもない製品だ」などと説明していた。
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