エレファンテックは、インクジェット印刷技術によって銅の使用量を70〜80%を削減する独自技術による、汎用多層基板の開発に成功したと発表した。「PCB製造における製造コストを年間1兆円以上削減するポテンシャルが存在する」としている。2025年前半には試作提供を開始する予定だ。
エレファンテックは2024年12月17日、インクジェット印刷技術によって銅の使用量を70〜80%を削減する独自技術による「汎用多層基板」の開発に成功したと発表した。これまでは片面フレキシブル基板しか開発できていなかったが、今回、世界PCB市場の8割を占める汎用多層基板の開発に成功したことで、「PCB製造における製造コストを年間1兆円以上削減するポテンシャルが存在する」としている。2025年前半には試作提供を開始する予定だ。
エレファンテックはインクジェット印刷技術によって銅使用量を70〜80%削減可能とする基板「SustainaCircuits」の量産化を行ってきた。一般的なプリント基板の製造方法は、基材上の全面に銅箔と感光材料をラミネートしてから露光、現像、エッチングによって不要な部分を溶解し廃棄することで、必要な部分にだけ銅を残し、所望のパターンを得るというものだが、同社の技術は、基材上の必要な部分だけに金属をインクジェット印刷し、 その後に無電解めっきで銅を成長させることで回路を形成するというもので、上述の銅の使用量の他、水の使用量およびCO2の大幅削減も実現可能といった特長がある。
ただ、同社はこれまで、世界PCB市場の2%程度という比較的ニッチな片面フレキシブル基板しか開発できていなかった。市場の8割程度を占める汎用多層基板への適用について、同社は2027年以降の実用化を計画していたというが、今回、「いくつかの技術革新」によって想定より早期に汎用多層基板の開発に成功したと発表。この技術によって、世界の基板の大半が置き換え可能になったとしている。
エレファンテックによると、片面フレキシブル基板の市場規模(面積ベース)は1000万m2程度だったのが、6層以下のリジッド基板であればその規模は3億7000万m2になるという。同社は「ほとんどの電子機器に使われている基板は6層以下のリジッド基板であり、特殊な基板を除けばほとんどの基板を置き換え可能となった」としている。
また、銅の使用量削減効果については、「多層基板の場合、層数分の銅箔が必要になる上、スルーホールめっきでも銅を消費するため、銅の消費量は大きくなる」と強調。今回開発した汎用多層基板向けでは、グローバルで1兆円規模の銅由来コスト削減ポテンシャルがあると試算しているという。
【上図に関連する注釈】1. 既存法の内層銅箔35um、外層銅箔18um、めっき厚25umとし、SustainaCircuitsは全層35um、パターン面積比率は30%、平米あたりビア個数は1万穴程度とした
2. 2023年富士キメラ総研「エレクトロニクス実装ニューマテリアル便覧」より、2029年の汎用FR-4向け電解銅箔の推定市場規模に、銅めっき用銅の市場規模を足したもの。銅めっきはめっき厚25umを想定
3. コストは銅地金ではなく、銅箔としての価格。2024年11月時点の銅建値1448円/kgをベースに銅箔加工賃の平均単価を足して算出
そして今回の新製法では、ビアと配線を同時に形成できることから、工程や材料、設備も大幅に削減可能だとも説明している。
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