筑波大学と産業技術総合研究所(産総研)らの研究グループは、インクジェットプリンターを用いて、「液滴レーザーディスプレイ」を作製することに成功した。今後、デバイス構成の改善やレーザー性能の向上を図ることで、レーザーディスプレイの早期実用化を目指す。
筑波大学数理物質系の山岸洋助教と産業技術総合研究所(産総研)の高田尚樹研究グループ長らによる研究グループは2024年12月、インクジェットプリンターを用いて、「液滴レーザーディスプレイ」を作製することに成功したと発表した。今後、デバイス構成の改善やレーザー性能の向上を図ることで、レーザーディスプレイの早期実用化を目指す。
次世代のディスプレイとして注目されているのがレーザーディスプレイである。液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの出力光に比べ、単色性やコヒーレンス、指向性に優れており、輝度と色再現度の点でもこれまでにない特性が得られる可能性がある。ただ、実用化に向けてはレーザー素子をさらに微細化し、高密度かつ大量に敷き詰める必要があるという。
研究グループは、耐久性に優れ不揮発性を示すイオン液体「1-ethyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate」に有機色素を添加した溶液と、インクジェットプリンティング技術を用い、超撥液加工を施した基板上に液滴を吐出した。液滴の直径は30μmで、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの1画素とほぼ同等サイズだという。これは、2cm四方に40インチ8Kモニターと同等の解像度で敵液を敷き詰められるレベルである。
実験では、液滴1滴を透明な電極で挟んだデバイスを作成した。これに外部から光を照射したところ、液滴から赤色のレーザー光(液滴レーザー)が放出されていることを確認した。ここで液滴に電場を与えたところ、球体だった敵液が楕円状に変形してレーザー光の放出が止まった。つまり、液滴がスイッチ可能な「レーザーピクセル」として振る舞うことが分かった。
レーザーディスプレイとしての機能を評価するため、液滴を2×3のアレイ状に配置したレーザーアレイデバイスを作成し、液滴に電場を印加した。この結果、各ピクセルのレーザー発光についてオン/オフ切り替えができることを実証した。
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