筑波大学やオーフス大学、愛媛大学、島根大学、理化学研究所らの研究グループは、相変化材料(ガラス)に圧力が加わると、規則的な原子配列は抑制され、それに伴い体積弾性率が上昇することを明らかにした。このメカニズムは過冷却液体の相転移機構と同じであることも判明した。
筑波大学やオーフス大学、愛媛大学、島根大学、理化学研究所らの研究グループは2023年12月、相変化材料(ガラス)に圧力が加わると、規則的な原子配列は抑制され、それに伴い体積弾性率が上昇することを明らかにした。このメカニズムは過冷却液体の相転移機構と同じであることも判明した。相変化メモリなどの高度化につながる成果とみられる。
相変化材料における過冷却液体領域の相転移機構については、液体が室温へと冷却される時、原子配列に「パイエルス様ひずみ」が出現し、ひずみの有無によって相転移前後の性質は変化することが近年、明らかになった。ガラスの相転移に関してもこれまでは、圧力を加えることで電気抵抗率や体積弾性率が変化することは分かっていたが、原子配列の変化までは解明されていなかったという。
研究グループは今回、大型放射光施設「SPring-8」のBL05XUにおける高エネルギーX線を用いた高圧回折実験と、機械学習により開発された原子間ポテンシャルを用いた分子動力学シミュレーションを組み合わせ、圧力下のガラスにおける原子配列の変化を調べた。この時、試料として用いたのは、「テルル化ゲルマニウムのガラス」と「セレン化ゲルマニウムのガラス」である。
この結果、テルル化ゲルマニウムは圧力の増加に伴い、パイエルス様ひずみが次第に抑制され、大気圧時に比べ約20%以下になると、体積弾性率は大きく増加した。セレン化ゲルマニウムでも、テルル化ゲルマニウムよりも高い圧力時ではあるが、同じように変化することを確認した。こうした結果は、分子動力学シミュレーションでも再現できたという。また、理論計算ではひずみ抑制に伴い、電子の状態密度図におけるバンドギャップが消失する様子も明らかになった。相転移に伴って金属−半導体転移が起きている可能性があるという。
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