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2030年に1000TOPS目指す 車載チップレットでAI導入加速imecはアライアンス設立(1/2 ページ)

ベルギーの半導体研究開発機関であるimecは、自動車メーカーとアライアンスを設立し、車載用半導体にチップレットを追加することで自動車分野へのAI導入を拡大する計画を立てている。

» 2025年01月22日 11時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]

 ベルギーの半導体研究開発機関であるimecは、自動車メーカーとアライアンスを設立し、車載用半導体にチップレットを追加することで自動車分野へのAI導入を拡大する計画を立てている。

 imecは、米国の自動車産業の中心地であるミシガン州デトロイトで2024年10月に開催された会合において、新しい基礎研究活動である「Automotive Chiplet Program」の初期メンバーとして、ArmとASE、BMW Group、Bosch、Cadence Design Systems、Siemens、SiliconAuto、Synopsys、Tenstorrent、Valeoが参加することを発表した。同アライアンスは、チップレットアーキテクチャとパッケージング技術を評価し、自動車メーカーの高性能コンピューティング(HPC)や厳格な安全要件をサポートするとともに、チップレットがもたらす柔軟性の向上や性能改善、コスト削減などのメリットを提供していく予定だという。

2030年に1000TOPSを目指す

 同アライアンスが開発するチップレットは、2030年頃までに、既存の自動車の処理性能を2倍に高められる見込みだとしている。例えば、中国のXpengが2024年10月に発表した電気自動車(EV)セダン「P7+」は、NVIDIAの「Orin X」チップを2個搭載し、11台のカメラと3台のミリ波レーダー、12個の超音波センサーから送られるデータで508TOPSの性能を提供するという。imecは、新種のチップレット設計を採用する自動車では、その性能数値を1000TOPSまで倍増できる見込みだとしている。

 imecのAutomotive Programディレクターを務めるKurt Herremans氏は、米EE Timesの取材の中で、「自動車のコンピューティングをモノリシックSoC(System on Chip)として構築することが難しくなってきている。そこでチップレットの出番だ」と述べる。同氏はIntelに在籍中、自動車向けチップのシステムアーキテクトを務めていた。

imec Automotive Programディレクター Kurt Herremans氏 imec Automotive Programディレクター Kurt Herremans氏[クリックで拡大]出所:imec

 技術調査会社TechInsightsでオートモーティブプラクティス部門担当バイスプレジデントを務めるIan Riches氏は、EE Timesの取材に対し、「自動車向けにはより高いプロセッサ性能が求められているにもかかわらず、開発サイクルを短縮しようという動きが強まっている」と述べる。

 Riches氏は、「大規模かつ強力なモノリシックICは、常に最高性能を提供するだろうが、時間とコストの両面で明らかに犠牲を伴う。チップレットのスケーラビリティと適応性は、より迅速な市場投入と開発コストの削減を実現できる可能性を秘めていて、多くの自動車メーカーにとって非常に魅力的だ。imecが想定するスケジュールは実現可能であるとみられ、確実に大きな関心を集めている」と述べている。

 Herremans氏は、「自動車の進化傾向から、2030年までに車載チップレットが必要になるとみられる」と述べる。

 「2030年の自動車には、モノリシックSoCではもはや提供できないほどの計算能力が必要になるだろう。そこに搭載されるエレクトロニクス機器や実際のチップレット製品は、2027年までに準備しなければならない。今から2027年までに、プロトタイプやPoC(Proof of Concept)などの開発に取り組む必要があるのだ」(Herremans氏)

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