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次世代蓄電池を高性能にする「極小ナノ粒子」を短時間で合成1時間で反応が完了し常圧で合成

北海道大学や東北大学らの研究グループは、アルファ型二酸化マンガンの極小ナノ粒子を短時間で合成する手法「アルコール溶液法」を開発した。合成した極小ナノ粒子は、多価イオン電池の正極や酸化反応触媒として高い特性を示すことが分かった。

» 2025年01月28日 13時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

球状に近い極小ナノ粒子、粒子粉末の比表面積は2〜3倍に増大

 北海道大学や東北大学らの研究グループは2025年1月、アルファ型二酸化マンガンの極小ナノ粒子を短時間で合成する手法「アルコール溶液法」を開発したと発表した。合成した極小ナノ粒子は、多価イオン電池の正極や酸化反応触媒として高い特性を示すことが分かった。

 二酸化マンガン(MnO2)は、乾電池や触媒として用いられてきた。中でも、トンネル構造のアルファ型二酸化マンガン(α-MnO2)は、二価のカチオンをトンネル内部に電気化学的に出し入れできるため、多価イオン電池の正極材料として注目されている。ただ、正極特性を高めるにはトンネルの長さを短くして、粒子のアスペクト比を小さくする必要があった。

 研究グループはこれまで、反応溶液にアルコールを用いた「アルコール還元法」を開発してきた。水に比べて溶解度が低いアルコールを反応溶液に用いた。これにより、結晶の溶解と再析出の反応が抑制され、マンガンスピネル酸化物などの極小ナノ粒子が合成できることを確認していた。

 α-MnO2の合成に向けて今回は、「アルコール還元法」と従来から用いられてきた「水熱法」を融合した「アルコール溶液法」を新たに開発した。実験では、アルコールを反応溶液とし、マンガン源に過マンガン酸塩を用いた。また、アンモニウムイオンを溶解させた溶液を熱処理したところ、アルコールが沸騰する温度(約80℃)でα-MnO2極小ナノ粒子が形成されることを確認した。しかも、1時間で反応が完了し常圧で合成できたという。従来の水熱法だと12〜24時間の反応時間と高耐圧容器が必要であった。

 今回合成したα-MnO2極小ナノ粒子は、バンドル全体の幅が約4nm、トンネルの長さは約8nmであった。水熱法で得られた粒子と比べ、粒子形状のアスペクト比は1/10である。しかも、粒子は長軸方向が選択的に短くなり、球状に近い形となることを確認した。得られた粒子粉末の比表面積は2〜3倍に増大し、多孔質であることも分かった。

α-MnO2の電子顕微鏡像と粒子の模式図[クリックで拡大] 出所:北海道大学他 α-MnO2の電子顕微鏡像と粒子の模式図[クリックで拡大] 出所:北海道大学他

 研究グループは、多価イオン電池の正極や酸化反応の触媒としてα-MnO2極小ナノ粒子を用い、その特性を評価した。この結果、従来材料に比べ高い特性を示したという。ただ、極小ナノ粒子は粒子が小さすぎて、そのままだと粒子同士が凝集し十分な正極特性が得られなかった。

 このため、グラフェンに分散させた複合体を作製した。そうすると粒子凝集が抑制され、過電圧やエネルギー損失の小さい充放電が可能となった。酸素を使った触媒的酸化反応では、1-フェニルエタノールなど有機化合物の酸化反応触媒として高い活性を示した。これは、「極小ナノ粒子化によって触媒活性の高いエッジ面が多く露出したため」とみている。

左は室温における次世代カルシウム電池の正極特性。右は酸素を用いたフェニルエタノールの酸化反応における時間変化[クリックで拡大] 出所:北海道大学他 左は室温における次世代カルシウム電池の正極特性。右は酸素を用いたフェニルエタノールの酸化反応における時間変化[クリックで拡大] 出所:北海道大学他

 今回の成果は、北海道大学大学院理学研究院の小林弘明准教授や松井雅樹教授、東北大学多元物質科学研究所の本間格教授、同大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)、金属材料研究所の折茂慎一教授、同大学金属材料研究所の市坪哲教授、東京大学大学院工学系研究科の山口和也教授、物質・材料研究機構の万代俊彦主幹研究員、芝浦工業大学工学部の木須一彰准教授、東京理科大学創域理工学部の北村尚斗准教授、井手本康教授、カールスルーエ工科大学、ヘルムホルツ研究所ウルムのマクシミリアン・フィクナー教授らが行った共同研究によるものである。

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