北海道大学の研究グループは、パワー半導体デバイスのパッケージング工程などに適した「銅系ナノ接合材料」を開発した。低温かつ短い焼結時間でも高い接合強度を実現できるという。
北海道大学大学院工学研究院の米澤徹教授と塚本宏樹博士研究員の研究グループは2024年11月、パワー半導体デバイスのパッケージング工程などに適した「銅系ナノ接合材料」を開発したと発表した。低温かつ短い焼結時間でも高い接合強度を実現できるという。
パワー半導体デバイスは、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの電力変換などに用いられ、需要が拡大している。こうした中、次世代のパワー半導体デバイスでは製造コストや環境負荷の低減が求められている。
例えば、素子を接合するために用いられてきた「鉛含有高融点はんだ」もその一つで、鉛を含まない新たな接合材料への切り替えが急務となっている。また、銅を用いた低温焼成型の導電材料も、空気中で酸化し発火する可能性がある。酸化を防止する方法もあるが、高温による焼結が必要で、低温焼結が求められる半導体プロセスには適さないという。
研究グループは今回、銅の原料として表面が酸化した金属銅粒子や、亜酸化銅・酸化銅粒子の混合体を液相還元という新たな手法で処理した。これによって、粒子の大きさを均一に制御し、不純物が生じるリスクも軽減した。その上、さまざまな銅ナノ粒子を大量合成することができるという。
特に今回は、金属銅粒子と微酸化銅ナノ粒子が複合化したコアシェル型の粒子系を合成した。これらを遠心分離で固液分離し、ペースト用の溶剤に再分散させることで酸化を抑制しつつ、90wt%を超える高い銅含有率のペーストを製造した。
実験では、銅系ナノ粒子とコアシェル型ナノ粒子を1バッチ当たり100〜200gの規模で合成したが、kg以上の単位で大量生産が可能なことも分かった。合成したコアシェル型銅ナノ粒子のコア部分には直径100nm程度の銅ナノ粒子が、シェル部分には直径2〜5nmの酸化銅ナノ粒子が、それぞれ確認された。
また、150℃で1分間加熱すると、2〜5nmの酸化銅ナノ粒子は20nm程度に成長することが分かった。これにより、低温でも強固な接合を形成できることを確認した。しかも、大きな銅粒子を混ぜてペーストの粘度を下げた場合、高濃度の導電ペーストが作成できる。さらに、保護剤の使用量を減らすことができ、低温焼結性と高い導電性を両立させることが可能となった。
コアシェル型銅ナノ粒子導電ペーストを用い、200℃で1分間加圧焼結を行った結果、40MPaのせん断強度が得られた。焼結時間を15分に延ばすと、せん断強度は100MPaとなった。さらに、200℃で60分間焼結したところ、体積抵抗率が10.7μΩcmの導電膜を形成できたという。
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