米国EE Timesは「CES 2025」に出展した村田製作所の社長 中島規巨氏にインタビューを行い、同社の長期構想「Vision2030」に向けた取り組みについて話を聞いた。
米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2025」(2025年1月8〜11日)の展示フロアの賑わいの中に村田製作所のブースはあった。同社は小型受動部品やワイヤレスモジュール、パワーマネジメントソリューションを展示していた。
垂直統合型デバイスメーカー(IDM)である村田製作所は、1970年代にニッケル電極を用いた独自の耐還元性チタン酸バリウムを発見した。この発見によって積層セラミックコンデンサー(MLCC)に高価な貴金属ベースの電極を使用する必要がなくなり、村田製作所は受動部品の世界シェアを拡大した。
現在、村田製作所は全世界で7万3000人以上の従業員を擁する。2024年3月期の売上高は1兆6400億円にのぼり、その約50%を中華圏市場が占める。米国EE Timesは、村田製作所のCES参加にあたって社長の中島規巨氏にインタビューする機会を得て、同氏の長期構想「Vision2030」と日本の大手コングロマリットである同社の今後の計画について話を聞いた。
特に最近の世界的にMLCCが不足していることと、安定したコンデンサー性能を確保するために企業が評判の良いメーカーに依存していることを考えると、受動部品市場でシェアを獲得するのは簡単なことではない。高周波およびパワーエレクトロニクスの重要なコンポーネントであるフィルターやコンデンサー、インダクターのみならず、村田製作所はパッケージングの専門知識を生かして、ワイヤレスモジュールやMEMSセンサー、パワーマネジメントソリューション、さらにはリチウムイオンバッテリーにまで事業範囲を拡大している。
中島氏は、同社がデジタルツインを活用してどのように業務を改善しているか語った。
「MLCC製造では、残念ながらまだいくらか不良が生じるが、AIによって不具合の種類に応じてプロトコルを分類することができるようになった。以前はオペレーターが製造プロトコルを手動で調整して不具合を解消していたのだ。近い将来、自動調整に移行する予定だ」(中島氏)
こうした改善の中には、マシンビジョンを使用して表面の変形をラベルリング/分類して、自動化プロセスを制御するためのフィードバックを提供することも含まれる。
中島氏は「当社は、他に類を見ない垂直統合型のビジネスモデルを採用している。通常、MLCCサプライヤーは材料や設備を外部から購入するが、当社の材料と設備は全て社内で調達している」と述べ、このことがいかに村田製作所の歩留まりと部品性能の継続的な向上に影響しているかを説明した。
中島氏は「部品内の各粒子を細かく制御する必要がある」と述べ、セラミック材料の粒径を一定にする必要性に言及した。「そのために、粒子を1つずつ制御する必要がある。このような精密な制御を行うには、自社独自の材料と加熱炉の開発が欠かせない」(同氏)
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