中島氏はVision2030について、同社の3つの注力分野である「標準品型ビジネス(EI)」「用途特化型製品(ASC)」「新ビジネスモデルの創出」のうち、最初の2つを取り上げた。ASCは主にワイヤレスモジュールやリチウムイオン二次電池、センサー技術などのパッケージ化されたエンドソリューションのことを指す。同社の中核ビジネスにはSub-GHz帯からミリ波帯の通信やeモビリティが含まれ、ITインフラにも力を入れているという。
中島氏は「当社はポートフォリオを複数のレイヤーに分けている。まずはMLCCや低温焼成セラミックス(LTCC)のような標準製品だ。一方、最先端製品では、世界市場でより高いシェアを獲得しようとしているが、こうした分野には競合メーカーが存在する。中国市場に関しては、当社には技術的な優位性があるといえる。垂直統合型のビジネスモデルのメリットがあり、10年以上同じ製品を生産してきたことで生産性が高く、コスト重視の方法で競争できる」と述べる。
「ハードウェア製品については、ターゲットとする用途や顧客を明確にする必要がある。米国には競合メーカーが多く存在するので、技術的な観点からも差別化を図っている」(中島氏)
中島氏は、村田製作所が取り組んでいる差別化の一例として、2022年にResonantを買収し、村田製作所のフィルター製造専門技術とResonantの「XBAR」技術を組み合わせたことを挙げている。これは既存のSAWフィルターやBAWフィルター、FBARフィルターとは異なり、より高い周波帯/帯域幅向けに適した技術で、高減衰や低損失といった優れたフィルター特性を実現し、既存のフィルターではノイズとして受信せざるを得なかった信号を抑制することができるという。
村田製作所は、自動車/データセンター用途向けのパワーソリューションの開発も継続している。ITインフラは大きな成長分野の1つだ。中島氏は「当社はMLCCやSAWフィルター、各種モジュールについては小型化を推進しているが、データセンターに関してはより信頼性の高い部品を使用した異なるアプローチが必要になる。当社の主要製品の1つはITインフラ向けパワーモジュールだ」と述べる。
中島氏はさらに、村田製作所が、eモビリティ/ITインフラの高電力アプリケーション向けパッケージングソリューションをどのように改善していくのかという点についても説明している。チップ本体とデカップリングコンデンサー/インダクターとの間の距離を近づける必要があり、それと放熱を両立させなくてはいけないという。村田製作所の受動部品内蔵基板「iPaS」は、GPUへの垂直電源供給を可能にし、電力損失を大幅に削減するものだ。
【翻訳:滝本麻貴/田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.