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「フラッシュメモリで」AI演算 消費電力はGPU比で1000分の1に2025年春にも試作チップが完成へ(2/3 ページ)

» 2025年02月04日 17時15分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

ResNet-18を1〜2個で処理できるAIチップを試作中

 フローディアは現在、CiMをタイル状に並べ、バスで接続したプログラマブルなAIチップ「FP(Field Programmable) CiM」を試作している。1つのCiM(CiMコア)は1MビットのSONOSメモリセルと演算回路、A-Dコンバーター、D-Aコンバーター、ALUやSRAMなどで構成されている。CiMコアでニューラルネットワークの演算を実行し、その結果を隣接するタイルに次々に渡していくことで演算を継続する。「試作中のFP CiMは、CiMコアを16個搭載したもので、ResNet-18の各レイヤーを一つ一つのCiMコアで演算していく。ResNet-18のようなニューラルネットワークモデルを、1〜2個のFP CiMで処理できる」(米田氏)。FP CiMの試作チップは既にテープアウトしており、現在評価中だ。2025年3〜4月にも登場する予定だという。

CiMコアの構成とFP CiMの概要[クリックで拡大] 出所:フローディア

 開発中のFP CiMはデータ保持性能も優れているとする。フローディアは、各メモリセルの電荷を制御し128レベル(7ビット)の多値化を実現。加えて、メモリセルに記憶させた128レベルの係数データを長期間保持できるという。「通常のフラッシュメモリセルでは100秒しかデータを保持できないが、現在は4時間保持できるところまで確認している。次世代のFP CiMテストチップでは10年保持できる可能性も見えている」(米田氏)

フローディアのSONOSメモリは、128レベル(7ビット)の多値化を実現[クリックで拡大] 出所:フローディア フローディアのSONOSメモリは、128レベル(7ビット)の多値化を実現[クリックで拡大] 出所:フローディア
メモリセルに記憶させた128レベルの係数データを長期保持できるという[クリックで拡大] 出所:フローディア メモリセルに記憶させた128レベルの係数データを長期保持できるという[クリックで拡大] 出所:フローディア

 FP CiMは、GPUの置き換えを狙うものではないとフローディアは主張する。「高速に積和演算を実行するSoC(System on Chip)やGPUのオフロードエンジンとして、コプロセッサの役割を担うものとしての位置付けだ」(米田氏)

 フローディアは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)における、高効率かつ高速な処理を実行できるAIチップ/次世代コンピューティングを開発するプロジェクト*)にも参画している。同プロジェクトには九州工業大学や日立製作所などが参画していて、リザバーコンピューティング用AIチップも開発している。これも2025年3月に試作チップが完成する予定だ。ノイズが多い環境下で使われるセンサー用のノイズ除去フィルターなど、産業用途を想定している。

*)NEDOでのプロジェクト名(事業名)は「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発事業」。2025年3月31日までを事業期間としている。

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