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「TSMCのIntelファウンドリー事業買収はない」観測筋が語るメリットがあるのはIntelだけ(1/3 ページ)

TSMCが米国ドナルド・トランプ政権からの要請を受け、Intel Foundryの運営権獲得を検討しているというニュースが業界をにぎわせている。米国EE Timesが取材した複数の業界アナリストらによると、TSMCが経営難にあえぐ米国のライバルであるIntelの半導体製造事業を買収することはないという。

» 2025年02月20日 15時30分 公開
[Alan PattersonEE Times Japan]

 業界アナリストによると、TSMCが、経営難にあえぐ米国のライバルであるIntelの半導体製造事業を買収することはないという。

「TSMCはIntelの半導体工場施設に興味がない」

 Bloombergが2025年2月、この件に詳しい人物の話を引用して報じたところによると、TSMCは米国のドナルド・トランプ政権からの要請を受け、Intel Foundryの運営権獲得を検討しているという。その数日後、Wall Street Journal(WSJ)は「Broadcomは、潜在的投資家がIntel Foundryを買収した場合、Intel Productsの買収に関心があるようだ」と報じている。

 米国最大級の半導体メーカーであるIntelは、低迷する業績の回復を目指し、自らを2つの事業体に分割している。一方は製品事業で、もう一方はファウンドリー事業だ。2024年12月に当時CEOだったPat Gelsinger氏が突然退任したことで、苦境に立つ同社は今もまだ漂流しながら新しいCEOを探しているところだ。

 トランプ政権は、米国半導体業界の復活を目指し、輸入半導体製品に関税を課すと宣言している。それと同時に、全世界の最先端チップの90%超を製造しているTSMCからさらなる投資を引き出すべく、台湾政府当局に圧力をかけている。エレクトロニクスメーカーや投資家にアドバイスを提供する市場調査会社International Business Strategies(IBS)のCEOであるHandel Jones氏は「TSMCとIntelの提携計画が報じられていたが、それは失敗に終わるだろう」と予測する。

 同氏は米国EE Timesの取材に応じ「米国政府は、国内に2nmプロセス以細の大規模生産能力を確保したいとしているが、これは適切な考えだ。重要な鍵となるのは、TSMCが米国内の生産能力に関してどの程度コミットするのかという点だ。TSMCは、Intelの半導体工場施設には興味がない。われわれは、両社とほぼリアルタイムベースで話をしている」と述べる。

 IntelとTSMCは、この件に関するコメントを拒否している。

トランプ政権の要請に関する不確実性以外、理由が無い

 技術調査会社TechInsightsのバイスチェアマンを務めるDan Hutcheson氏は、EE Timesの取材に応じ「TSMCにとって、トランプ大統領の要請に関して不確実性があるという点を除き、Intelを支援する理由がない。Intelは自社ファブを運営できていて、『Intel 18A』開発も順調に進めている。Intelに必要なのは、工場を受注で満たすことだ」と述べる。

 またHutcheson氏は「Intel Foundryの買収は、TSMCの収益にとって、大きな負担になるだろう」と付け加えた。

 米国ワシントンD.C.に拠点を置く経営コンサルタント会社Albright Stonebridge Groupで、グローバルなテック企業のアドバイザーを務めるPaul Triolo氏は「TSMCは、地政学的に最もデリケートな位置付けにある。米国政府からの要請には、それがいかに不当な要求であろうと対応しなければならないだろう。TSMCは以前にも、中国Huaweiへの半導体チップ供給を停止し、アリゾナ工場の建設にも合意した。そして現在は、Intelへの支援について検討している」と述べる。

 EE Timesが2024年に接触したアナリストらは、Intelは買収を模索するよりもAlteraやMobileyeのような非中核事業を売却する方が有利だと語っていた。

 WSJおよび英国Financial Timeが報じたところによれば、Qualcommは2024年9月に、Intelに対して買収の可能性を提示したという。しかしそれ以降、この話題に進展は見られない。

 Triolo氏は「TSMCは、IntelがNVIDIAやQualcomm、Broadcomのような最先端設計メーカー向けのファウンドリーサービスを拡大し、顧客として契約することをサポートできるだろう」と述べる。

 「どの顧客がどのファウンドリーサービスを利用するのかは、誰が決めるのだろうか。これは簡単な問題ではない。というのも、IntelやTSMCの他、主要なデザインハウスとの間でより多くの協業が必要になるからだ。トランプ政権は、この問題を十分な時間をかけて深く検討できておらず、まだほんの初期段階の取り組みとなっている」(Triolo氏)

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