SemiAnalysisのアナリスト、Jeff Koch氏は、秘密保持契約(NDA)を理由にこの件に関するコメントを避けつつ、『Intelが死の瀬戸際にある』とする2024年12月9月付のSemiAnalysisレポートを示した。
同社はレポートの中で「Intel FoundryはIntelにとって最重要な部門であり、救われなければならない。Intel FoundryはIntelの未来だ。米国および西半球にとって巨大な戦略的価値がある。最先端の半導体は、消費者、産業、軍事アプリケーションに不可欠だが、西半球にはそれを大規模に生産する能力がない」と述べている。
Intelは、2025年にIntel 18Aプロセス採用チップの生産を開始し、プロセス技術をTSMCの2nmノードと同等にすることを期待している。ただIntelは、一部新製品の発売を中止などロードマップの全面見直しを行っている。
SemiAnalysisのレポートでは「台湾政府はTSMCの最新ノードの海外生産を許可しない。アリゾナプロジェクトでの5nmおよび3nmプロセスの生産能力は台湾の5分の1以下だ。そしてアリゾナは間もなく最先端から2プロセスノード遅れることになるため、国家安全保障を達成するためにはより多くの供給が必要になる」と説明している。
Intelは軍事用の最先端チップ供給で主導権を握ろうとする米国政府にとって極めて重要な存在だ。
米国防総省のRAMP-C(Rapid Assured Microelectronics Prototypes-Commercial)プログラムにはBoeingやNorthrop Grummanら軍事関連メーカーがIntelと共に参加している。IBMやNVIDIA、Microsoft、Qualcommは、Intel Foundryでの既存のRAMP-Cパートナーであり、2023年、当時CEOだったPat Gelsinger氏は「2024年後半までに『製造準備が整う』ように、Intelの18Aプロセス採用のテストチップを設計している」と述べていた。
業界関係者や政府オブザーバーによると、米国防総省は国内生産能力への投資が乏しいため、アジアの半導体供給に依存している。
トランプ大統領は、前任者のジョー・バイデン氏が制定したCHIPS法補助金を批判している。これによって、TSMCがアリゾナ州に第3のチップ工場を建設するためにバイデン政権が発表した66億米ドルの補助金および最大50億米ドルの融資が危うくなる可能性がある。トランプ大統領はCHIPS法を「非常に悪い」と評しているが、詳細は明らかにしていない。
バイデン政権はまた、CHIPS法を通じてIntelに最大78億6000万米ドルの直接資金を供与した。これは半導体メーカー向けでは最大額だ。この資金供与の条件の一つは、Intelが新会社に分離した場合も、工場の過半数のシェアを維持することである。
WSJの報道によると、Intelの暫定会長であるFrank Yeary氏が、潜在的な投資家やトランプ政権高官との協議を主導してきたという。
Hutcheson氏は「この報道が正しければ、Yeary氏はプライベートエクイティの観点から、長期的なインフラの必要性を無視した短期的な財務的解決策を提案しているように見える。この近視眼的な解決策が実現すれば、Intelの大規模なプロセス研究開発能力は空洞化し、最終的にはTSMCの活動と重複してしまうため、閉鎖されることになるだろう」と述べている。
WSJは、米国政府関係者がトランプ大統領がTSMCのような外国企業がIntelの工場を運営するような取引を支持する可能性は低いと述べたとも報じている。
Triolo氏は「トランプ政権は、外国の巨大テクノロジー企業が、米国の代表的企業の事業を運営することを容認しているという印象を避けたいと考えている。そのため、TSMCの役割には、やや問題があるようだ。また、トランプ政権が中国政府による審査を無視することを決めない限り、中国はいかなる種類の合併/買収も頓挫させる立場にあるだろう」と述べている。
Hutcheson氏も「合意に至る可能性はない」と指摘。「それはIntelの自己都合的な財務状況にとっての利益になるだけだ。米国の国家安全保障上の利益には害となる。そして、TSMCの利益にもならない。競合他社がいなくなれば独占できるのに、なぜ溺れかけている競合他社を救う必要があるのか?」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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