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パワー半導体市場、25年後半に在庫が正常化 26年から成長拡大2035年に7兆7710億円規模へ(1/2 ページ)

富士経済はパワー半導体の世界市場を調査、2035年には7兆7710億円規模に達すると発表した。2024年に比べ2.3倍の市場規模となる。2024年は電気自動車(EV)の需要鈍化などで在庫を抱えたが、長期的には電動車の普及拡大などにより、パワー半導体市場は大きく伸びると予測した。

» 2025年04月07日 09時15分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

SiCやGaNなど次世代パワー半導体、2035年に3兆円台へ

 富士経済は2025年4月3日、パワー半導体の世界市場を調査、2035年には7兆7710億円規模に達すると発表した。2024年に比べ2.3倍の市場規模となる。2024年は電気自動車(EV)の需要鈍化などで在庫を抱えたが、長期的には電動車の普及拡大などにより、パワー半導体市場は大きく伸びると予測した。

 今回の調査では、ショットキーバリアダイオード(SBD)やMOSFET、インテリジェントパワーモジュールなどパワー半導体として17品目、シリコン/窒化ガリウム(GaN)/炭化ケイ素(SiC)ウエハーやレジスト、封止材料といった構成部品が20品目、露光装置やスパッタリング装置、ICテスターなど製造装置は20品目を対象とした。調査期間は2024年10月〜2025年2月。

 パワー半導体市場は、EVの需要鈍化やFA向けの投資減退、中国の景気悪化などの影響により、2024年は在庫を抱えた。2024年後半より需要は回復基調にあり、2025年後半には在庫も正常化する見通しである。

 2025年のパワー半導体市場は、3兆5285億円を見込んでいる。このうち、シリコンパワー半導体が3兆147億円を占める。在庫調整の影響で微増となるが、在庫正常化に伴って2026年以降は市場が拡大する。2035年には4兆5729億円になると予測した。

 次世代パワー半導体は2025年に5138億円の市場規模を見込む。伸び率が小さいSiCパワー半導体に対し、GaNパワー半導体はシリコン半導体からの置き換えなどによって大きく伸びた。これらの次世代パワー半導体は今後も需要は拡大する。2026年ごろには、より高電圧で大電流に対応できる酸化ガリウムパワー半導体が実用化される見通しで、市場拡大に弾みをつける。2035年の次世代パワー半導体市場は3兆1981億円と予測した

 今回の調査レポートでは、次世代パワー半導体の中で特に、「SiCパワー半導体」と「GaNパワー半導体」「酸化ガリウムパワー半導体」を注目製品として挙げた。

 SiCパワー半導体(SiC-SBD、SiC-FET、SiCパワーモジュール)市場は、2025年見込みの4558億円に対し、2035年は2兆9034億円と予測した。EVにおけるSiCパワー半導体の採用率は、2024年の10%強に対し、2035年は50%を超える見通し。太陽光発電用パワーコンディショナーなど、自動車・電装分野以外での採用も本格化するとみている。

 GaNパワー半導体市場は、2025年見込みの580億円に対し、2035年は2787億円と予測した。量産効果などによって価格が低下し、2024年はAC-DCアダプターへの搭載が増えた。サーバ電源でもシリコンからの置き換えが進んだという。今後も、オンボードチャージャーやLiDAR、太陽光発電パワーコンディショナーなどへの採用が増えるとみている。

 酸化ガリウムパワー半導体市場は、現在わずかだが2035年には149億円規模になると予測した。SiCやGaNパワー半導体より、さらに高電圧かつ大電流に対応できるのが特長である。2026年ごろから民生機器やサーバ電源に向けたSBDの生産が本格化する見通し。2030年ごろには高耐圧の用途に向けたFETの生産も始まるとみられている。

パワー半導体の世界市場(実績および予測)[クリックで拡大] 出所:富士経済 パワー半導体の世界市場(実績および予測)[クリックで拡大] 出所:富士経済
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