1インチサイズの全固体電池を10秒で作製 レーザーで加工:イオン伝導する界面形成に成功
長岡技術科学大学は、レーザーによる造形技術を用い、室温かつ低拘束圧の環境で充放電を行うことができる「全固体ナトリウム電池」を開発した。
長岡技術科学大学技学研究院物質生物系の本間剛教授と博士後期課程先端工学専攻3年の佐藤史隆氏らによる研究グループは2025年4月、レーザーによる造形技術を用い、室温かつ低拘束圧の環境で充放電を行うことができる「全固体ナトリウム電池」を開発したと発表した。
全固体電池は、エネルギー密度が高く安全性にも優れているため、次世代の蓄電デバイスとして期待されている。長岡技術科学大学でもこれまで、酸化物ガラスおよびセラミックスからなる全固体電池を作り出してきた。ところが、酸化物セラミックス材料は、加工性が低く、部材間における接触の質も悪くなるため、イオン伝導性が低下し十分な性能が得られないなど課題があった。
研究グループは今回、酸化物全固体ナトリウムイオン電池の負極用として新たに「スズ系結晶化ガラス」を開発した。また、レーザー誘起局所加熱による溶融凝固によって、イオン伝導する界面を形成した。
従来の製造プロセスでは、電気炉を用いて全体を加熱し電池を作製していた。このため少なくとも数時間かかり、固体電解質から成分が溶け出していたという。今回はレーザーを照射して溶融する。これにより、サイズが1インチの電池を作製するのに、わずか10秒程度で済むようになった。レーザーの焦点で加熱される時間は「ミリ秒」と極めて短く、固体電解質へのダメージを抑えることができるという。また、レーザー照射によって部材間の界面を丈夫に形成することができた。こうした工夫により、室温かつ低拘束圧の環境で全固体電池の充放電が行えることを実証した。
従来手法と開発した手法の違い[クリックで拡大] 出所:長岡技術科学大学
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