全固体電池内のイオン伝導度を高速、高精度に予測:次世代電池材料の開発を一気に加速
東京科学大とクイーンズランド大学の研究グループは、全固体電池や燃料電池内のイオン伝導度を、高速かつ高精度に予測できる計算手法を開発した。「非平衡MD(分子動力学)法」と呼ばれるこの方法は、従来の平衡MD法に比べ100倍も高速に計算できるという。
東京科学大学総合研究院化学生命科学研究所の佐々木遼馬助教と館山佳尚教授、クイーンズランド大学のデブラ・サールズ教授らによる研究グループは2025年2月、全固体電池や燃料電池内のイオン伝導度を、高速かつ高精度に予測できる計算手法を開発したと発表した。「非平衡MD(分子動力学)法」と呼ばれるこの方法は、従来の平衡MD法に比べ100倍も高速に計算できるという。
リチウムイオン電池では、従来の有機電解液ではなく、安全性に優れた固体電解質を用いる全固体電池が注目されている。ところが、室温環境で高いイオン伝導度を示す固体電解質はあまり見つかっていないという。その背景には、室温領域のイオン伝導度を高速に計算する手法がなかったことも影響しているといわれている。
左は全固体電池の模式図、右は固体電解質内におけるイオンの協同的運動の模式図[クリックで拡大] 出所:東京科学大学
研究グループは今回、系に外場を与えてイオンの流れを一定に制御する非平衡MD法を開発した。これは、定電流試験に相当するシミュレーション手法だという。実験では、代表的な固体電解質の1つであるLi7La3Zr2O12を対象とした。
開発した計算手法で算出した室温領域におけるイオン伝導度の値は、実験値とよく一致した。また、この計算時間についても検証した。この結果、室温に領域に近づくにつれ、計算速度が速くなった。しかも、これまで計算が難しいといわれてきた系の大きい材料に対しても、開発した計算手法が適用できるという。
深層学習技術と組み合わせることも可能で、計算による高イオン伝導性電解質の探索が、一気に加速される可能性が出てきた。
平衡MD法と非平衡MD法の比較、右は定イオン流非平衡MD法の概念図[クリックで拡大] 出所:東京科学大学
左はイオン伝導度の温度依存性、右は開発した計算手法による高速度化[クリックで拡大] 出所:東京科学大学
量子センサーに向けたダイヤモンド結晶基板を作製
東京科学大学と産業技術総合研究所、信越化学工業らによる研究グループは、ヘテロエピCVD成長により、大面積のダイヤモンド結晶基板を作製、この基板を用いて高精度の量子センサーを開発した。EVに搭載される電池モニターや生体計測などへの応用が期待される。
超高容量を実現 全固体フッ化物イオン二次電池用正極材料
京都大学の研究グループは、トヨタ自動車や東京大学、兵庫県立大学、東北大学および、東京科学大学と共同で、全固体フッ化物イオン二次電池用の超高容量正極材料を開発した。既存のリチウムイオン二次電池正極材料に比べ、2倍を超える高い可逆容量を示すことが分かった。
UVナノインプリントによるシリコンフォトニクスプロセスを開発
東京科学大学と東京応化工業は、UVナノインプリントリソグラフィー(UV-NIL)を用いたシリコンフォトニクス半導体プロセスを開発した。開発した光硬化性樹脂と同プロセスを用いて試作したシリコン導波路は、電子線描画を用いて作製した光導波路と同等レベルの性能が得られることを確認した。
FRAM向け新材料を開発、メモリ動作電圧が6割減に
産業技術総合研究所(産総研)と東京科学大学は、強誘電体メモリ(FRAM)に用いる新材料として「GaScN結晶」を開発した。金属添加物(Sc)の濃度を高めることで、杭電界を小さくした。これにより、従来の窒化物材料と比べメモリ動作に必要な電圧を60%も下げることができるという。
600℃でCOからカーボンブラックを大量に合成
東京科学大学(Science Tokyo)は、プラズマ流動層反応装置を用い、約600℃の低温でCOから電気伝導性が高いカーボンブラックを連続かつ大量合成することに成功した。合成プロセスにプラズマで発生する熱などを有効利用できれば、CO2排出量を従来の10分の1に低減できる可能性もある。
工場やクルマからの排熱を回収して再利用 新たな蓄熱材
三菱電機と東京科学大学は、水を主成分とする感温性高分子ゲルを利用した「蓄熱材」を開発した。この蓄熱材を活用すれば、工場や自動車、住環境などから放出される30〜60℃の低温排熱を有効に回収し、再利用できる。
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