情報通信研究機構(NICT)は、ソニーセミコンダクタソリューションズと共同で、光ファイバー通信に向けた1550nm帯用面発光レーザー(VCSEL)を開発した。光ファイバー通信向け光源の小型化や低消費電力化、低コスト化が可能となる。
情報通信研究機構(NICT)は2025年4月、ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、ソニー)と共同で、光ファイバー通信に向けた1550nm帯用面発光レーザー(VCSEL)を開発したと発表した。光ファイバー通信向け光源の小型化や低消費電力化、低コスト化が可能となる。
今後の通信システムにおいては、大容量データを少ない電力消費で伝送する技術が求められている。こうした中で期待されているのがVCSELを用いた光ファイバー通信である。ただ、これまでのVCSELは、850nmや940nmといった波長領域で用いられてきた。1550nmという長波長で動作するVCSELを開発するには、材料の選択や構造設計が複雑になるなど、いくつかの課題があったという。
そこで今回は、NICTが保有する高精度な結晶成長技術と、ソニーが蓄積してきた高度の加工技術を活用して1550nm帯用VCSELを開発し、電流駆動に初めて成功した。発光材料として「量子ドット」と呼ばれるナノスケールの半導体粒子を用いたのがポイントだという。
1550nm帯用VCSELの開発においては、2つの要素技術を組み合わせて実現した。その1つはNICTが開発した、「分子線エピタキシ―を用いた化合物半導体結晶成長技術」である。今回は、1550nm帯でも99%以上という高い反射率が得られる半導体多層膜を成長させることに成功した。しかも、量子ドットの周りに発生する結晶のひずみを打ち消す「ひずみ補正技術」を適用し、量子ドットの密度を飛躍的に高めることができた。
もう1つは、ソニーが開発した技術で、トンネル接合により高効率の電流注入を可能にしたデバイスの設計技術と、高精度なプロセス技術である。これによって、レーザーの光出力を効率よく出射させることができた。
両者の技術を組み合わせて試作した1550nm帯用の量子ドットVCSELを評価したところ、13mAというわずかな電流でレーザー発振させることに成功した。偏光の揺らぎがなくなり、出力が安定することも確認した。
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