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トランプ政権の「アメとムチ」 Intelは補助金を受け取れるのかCHIPS法見直しの可能性(1/2 ページ)

米トランプ政権が、「CHIPS and Science Act(CHIPS法)」を見直す可能性が出ている。2025年3月には「投資アクセラレーター」を商務省内に新設。米国への投資を促進する呼び水になると強調している。

» 2025年04月14日 14時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]

 米国EE Timesの取材に応じたアナリストらによると、ドナルド・トランプ米大統領の「CHIPS and Science Act(CHIPS法)」改正の大統領令は、数週間前にTSMCが約束した1000億米ドル規模の取引のように、半導体製造への大規模な投資を呼び込む可能性があるという。

 トランプ政権は2025年3月31日(現地時間)、米商務省内に「投資アクセラレーター」というオフィスを新設する大統領令に署名した。アナリストらは「投資アクセラレーターは、米国に投資する半導体メーカーが規制上のハードルをより迅速にクリアし、米国での製造コストを最大10%削減するのに役立つはずだ」と述べている。

 この大統領令は「30日以内に商務長官が米国投資アクセラレーターを設立して、投資家が規制プロセスを円滑に進めて規制上の負担を軽減できるように支援することで、米国で10億米ドル以上の投資を促進する」としている。同命令によると、同アクセラレーターは商務省内のCHIPSプログラムオフィスを監督し、「前政権よりはるかに優れた取引を交渉することで、納税者に取引の利益をもたらすことに重点を置く」という。

 CHIPS法の改正は、トランプ大統領が最近導入した関税という“ムチ”を和らげるのに役立つ“アメ”かもしれない。バイデン政権下では、米国の半導体産業を復活させるためにCHIPS法によって補助金が創設されたが、トランプ大統領は、さらなる補助金の交付を廃止する可能性が高い。アナリストらによると、トランプ大統領は、IntelやSamsung Electronics(以下、Samsung)のようにCHIPS法のマイルストーンに達していない企業に対する補助金を差し控える可能性もあるという。

 トランプ政権とバイデン前政権はともに、米国の半導体産業の復活は国家安全保障上の課題であると強調してきた。アナリストらによると、両者の違いは、トランプ氏がより高い財務利益を目指している点だという。

さらなる補助金獲得は難しい?

 SemiAnalysisのアナリストであるJeff Koch氏は「契約によって義務付けられているとしても、今後さらなる補助金が交付されることは、ほぼないだろう。トランプ政権は、米国の半導体産業、特に製造業への支援を続ける可能性が高い。同政権は、特に最先端の製造と研究開発の戦略的重要性を認識しており、他国と“競争条件を公平にする”ことを望んでいる。オンショアリング(国内生産)を推進するには、直接的な補助金ではなく、関税と新たに導入予定の税額控除が有効な手段である」と述べている。

 トランプ大統領も「関税によって、より多くの企業が米国の製造業に投資するようになる」と述べている。

 Moor Insightsの主席アナリストを務めるPatrick Moorhead氏はEE Timesに対し「同アクセラレーターは、米国企業への出資を加速させ、外国企業への出資を減速させる可能性が高い」と述べている。同氏は「米国企業に対する投資が減ることはないが、外国企業への投資は減少すると予想している」と語った。

 Moorhead氏によると、現時点で、CHIPS法の補助金予算総額の約10分の1にあたるおよそ43億米ドルが支払われたという。

 Moorhead氏は「世界的な関税にまつわる最初の混乱が収束すれば、半導体に焦点が当てられると考えている。トランプ大統領は特にTSMCやSamsungとより良い取引を交渉しようとするだろう」と付け加えた。

 半導体は当初、輸入関税が免除されていたが、半導体製造に対する米国のコミットメントが大幅に増えない限り「非常に大きな関税が課されることになるだろう」とMoorhead氏は予測している。

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