TechInsightsのバイスチェアマンを務めるDan Hutcheson氏によると、IntelやSamsungのように米国での生産能力の拡張が遅れている企業は、交付が決定したがまだ受け取っていない補助金を失う可能性があるという。
Hutcheson氏は「IntelとSamsungへのCHIPS補助金は、間違いなく打ち切られる危機に瀕している。特に、両社が財政的困難に直面し、それが計画の縮小につながっていることが要因だ。CHIPS補助金の交付が確定している小規模企業に関しては、必要不可欠な半導体技術を提供している企業であれば特に、打ち切りを免れる可能性が高い」と述べている。
CHIPS補助金の交付が確定している小規模企業には、パワー半導体メーカーのPolar SemiconductorやWolfspeedなどがある。Polar Semiconductorは2024年、CHIPS補助金を初めて獲得した企業となった。同社は、この資金を活用して「世界初」(同社)のパワー半導体専用ファウンドリーになる予定だ。WolfspeedもCHIPS補助金を受給する見込みだ。同社は、ここ数カ月で株価が急落する中、経営再建を目指して新たなCEOを任命した。
SemiAnalysisのKoch氏は「全ての企業は補助金を失うリスクにさらされているが、特に最先端技術やAIに携わっていない企業はその可能性が高い。Intel、TSMC、Micron Technology、SK hynixはいずれもAIアクセラレーターのサプライチェーンに属しているため、税額控除や類似のインセンティブの形でさらなる支援を受けられる可能性があるが、補助金を受けられない可能性は高い。Wolfspeedのような(比較的レガシーのプロセスを使う)企業は支援を受けられる可能性は低いが、税額控除は受けられる可能性がある。Samsung Foundryも、拠点が米国でなく、先端ノードにおいてTSMCに代わる有力な選択肢ではなく、テキサス州テイラーのプロジェクトにも遅れが生じていることから、今後優遇される可能性は低い」と述べている。
Hutcheson氏は「米国が時代遅れの煩雑な規制手続きや許認可申請のハードルを“真に”下げることができれば、投資アクセラレータープログラムは、米国により多くの投資を呼び込むだろう」と述べた。同氏は「煩雑な規制手続きのせいでファブの建設に2年も余計にかかるだけでなく、コストも約10%増えている。皮肉なことに、CHIPS法はあらゆる遅延や優柔不断の結果、これらのコストをさらに悪化させた」と指摘した。
トランプ大統領の大統領令により、TSMCのような発表が今後さらに増えることは確実だとKoch氏はみている。ただしTSMCは、アリゾナ州への新たな1000億米ドルの投資について、具体的なスケジュールや技術ロードマップを明らかにしていない。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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