ここで、4月17日に東京・大手町サンケイプラザで開催されたTrendForceのセミナーにおいて、同社アナリストのKen Kuo氏が「Analysis and Technical Advancement of Most Advanced Foundry and Package Markets in 2025 under the AI Future」と題して発表したスライドをもとに、主要な8インチおよび12インチのファウンドリーの稼働率を見てみよう。
まず8インチのファウンドリーでは、TSMCの稼働率は、2020年Q1に95%、2021年Q1に97%、2022年Q1には101%とフル稼働状態が続いていた。しかし、2023年Q1には89%、2024年Q1には60%まで大きく落ち込んだ。その後、2025年Q1に69%、同年Q4には79%まで回復する見通しだが、依然としてフル稼働には程遠い水準である(図4)。
次に12インチファウンドリーを見てみると、TSMCの稼働率は2020年Q1に94%、2021年Q1に96%、2022年Q1に97%と高水準を維持していたが、2023年Q1には83%、2024年Q1には80%と低迷している。その後、2025年Q1には86%、同年Q4には87%まで回復する見通しとなっている。8インチ工場に比べれば、まだ“マシ”であるが、こちらもフル稼働には届かない(図5)。
ここまでのデータをまとめると、2025年Q1のウエハー出荷枚数は326万枚であり、ピーク時の397万枚と比較すると約82%に相当する。一方、TrendForceの予測によると、2025年Q1におけるTSMCの8インチおよび12インチ工場の稼働率は、それぞれ69%および86%である。このことから、ウエハー出荷枚数から算出された82%という数値は、TSMC全体の工場稼働率をおおよそ反映していると考えられる。
つまり、TSMCの工場稼働率は、2023年Q3から2025年Q1にかけて、非常に低い水準で推移していると言える。これは、四半期の売上高が過去最高を更新している状況とは対照的な動きである。
少し脇道に逸れるが、8インチおよび12インチの主なファウンドリーはいずれも、コロナ特需の終焉による景気後退の影響を受け、2023年には稼働率が大きく低下した点に触れておきたい。
8インチのファウンドリーでは(中国のHH Graceを除き)おおむね50%前後、12インチのファウンドリーでは60%前後にまで落ち込んだ。そして、2025年Q4においても、いずれもフル稼働には至らないという予測が示されている。
要するに、2023年の不況は、2024年を経ても完全には回復せず、2025年になってもなお影を落としている。主要なファウンドリーが再びフル稼働となるのは、来年、すなわち2026年以降に持ち越される見通しである。
次に、テクノロジーノード別の売上高について見てみよう。まずは、積み上げ方式のグラフを作成した(図6)。
過去から現在までを振り返ると、2019年Q3に、世界で初めて孔パターンに最先端の極端紫外線(EUV)露光装置を量産適用した7nm+(現在では6nmと呼ばれることが多い)の売り上げが計上された。この時点での四半期売上高は、約100億米ドルであった。
その1年後の2020年Q3には、配線にもEUVを適用した5nmノードの売り上げが計上され、以降TSMCの売上高は7nmおよび5nmノードにけん引され、2022年Q3には200億米ドルを突破した。
その後、コロナ特需の終焉に伴う景気後退で全体の売上高は一時減少したものの、2023年Q2を底に再び上昇へ転じた。そして、同年Q3には3nmノードの売り上げが計上され、5nmおよび3nmが成長をけん引して、2024年Q4には250億米ドルを超えた。
ただし、上記の積み上げグラフでは各テクノロジーノードの売上高の動向が把握しづらいため、図7では各ノードの売上高を折れ線グラフで示した。すると、そこには全く異なる景色が浮かび上がってきた。
まず、TSMCが先端ノードと位置付けている7nmが2022年Q2に55億米ドルでピークアウトし、2023年Q3には27.6億米ドルに半減して、その後も回復する気配が無い。また、16nm、28nm、40nmのいずれも、2022〜23年から2024年にかけて減少し、低水準の売上高が続いている。
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