Aelumaは、防衛/航空宇宙分野の他にも、スマートフォンのような大規模コンシューマー市場でもInGaAsチップの拡大を目指すという。
「他のあらゆる市場において、量産を拡大し、コストを削減することが非常に重要だ」(Klamkin氏)
SWIRデバイスは現在、勢いを増している。米国カリフォルニア州で2024年12月に開催された「IEDM 2024」では、世界的な研究開発機関であるimecとパートナー各社が、ヒ化インジウム量子ドットフォトダイオードを搭載したSWIRセンサーのユニークなプロトタイプを披露した。このセンサーは1390nmのイメージング結果を示し、幅広い普及の妨げとなっていたもう1つの要因である鉛を含んだ第1世代の量子ドットを置き換える、環境に優しい代替品を提供する。imecのPoC(Proof of Concept)は、低コストかつ無毒なフォトダイオードを用いた赤外線イメージングのマスマーケット実現に向けた、重要なステップだといえる。
Klamkin氏は、コンシューマーエレクトロニクス分野において、SWIRの採用により性能が大幅に向上する可能性があるデバイスの一例として、Appleの「iPhone」を挙げる。iPhoneの「Face ID」は、カメラなどの生体認証技術を使用して所有者の顔をスキャン/認識することにより、人間の顔が、他のデバイスを開くための“カギ”として効果的に機能している。
Klamkin氏は「iPhoneは、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)とシリコンベースの近赤外線検出器を使用しており、これが視力に害を及ぼす可能性がある」と指摘する。
「それは目にとって安全ではないため、光力を非常に低くしなければならない。SWIRに切り替えれば、光力を上げても網膜がダメージを受けないため、目に優しいだけでなく、太陽干渉が極めて低い電磁スペクトル領域でもあるなど、他にもさまざまなメリットがある」(Klamkin氏)
同氏によると、Aelumaのサンプルについて、顧客からとても良いフィードバックを得ているという。「これまで評価されてきたゲルマニウム検出器と比べると、暗電流は1000分の1で、効率性は90%を超える。これは、当社の技術をコンシューマー向けSWIRセンサーに導入する場合のビジネスケースだ」(Klamkin氏)
SWIRカメラでは、光がない状態でも、熱的に励起された電子によって生成されたいわゆる暗電流がセンサーを流れる。暗電流は、ノイズを発生させることで画像品質に影響を及ぼす。
Aelumaは、成膜をはじめ、一部の生産を社内で手掛けているが、そのプロセスをファウンドリパートナーへ移行しようとしている。Klamkin氏は、「われわれは完全なファブレスを目指しており、大手ファウンドリーと提携している」と語った。Aelumaの製品は、ニューヨーク州にあるプロトタイピングサービス企業、AIM Photonicsでパイロット生産の段階に入っている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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