高温環境下でオン抵抗20%減、東芝のSiCトレンチMOSFET:EVや再生可能エネルギー向け
東芝デバイス&ストレージ(東芝D&S)は、高温環境下での動作が求められる電気自動車(EV)や再生可能エネルギーなどの電力変換用途に向け、信頼性と効率の向上を可能にする「炭化ケイ素(SiC)トレンチMOSFET」と「SiCスーパージャンクションショットキーバリアダイオード(SJ-SBD)」を開発した。
東芝デバイス&ストレージ(東芝D&S)は2025年6月、高温環境下での動作が求められる電気自動車(EV)や再生可能エネルギーなどの電力変換用途に向け、信頼性と効率の向上を可能にする「炭化ケイ素(SiC)トレンチMOSFET」と「SiCスーパージャンクションショットキーバリアダイオード(SJ-SBD)」を開発したと発表した。
新たに開発したSiCトレンチMOSFETは、ゲート酸化膜の信頼性を高めるため、トレンチの下側に保護層として「Bottom p-well」を形成している。このBottom p-wellの接地抵抗を最適化することでUIS(Undamped Inductive Switching)耐量が向上することを確認した。
Bottom p-wellを形成したSiCトレンチMOSFETの断面図[クリックで拡大] 出所:東芝D&S
さらに、UIS耐量と電界保護構造に対する接地抵抗の関係性を明らかにした。これによって、ゲート酸化膜の信頼性向上とオン抵抗低減を両立させるための最適な構造も見出した。今回試作したSiCトレンチMOSFETは、従来のプレーナー型SiC MOSFETに比べ、オン抵抗を約20%低減できたという。
従来のプレーナー型SiC MOSFETとSiCトレンチMOSFETにおけるオン抵抗の比較(東芝D&S調べ)[クリックで拡大] 出所:東芝D&S
一方で、新開発のSiC SJ-SBDはドリフト層にピラーを配置し、高温環境で抵抗が増加するのを抑えた。温度を変えた時に変化するオン抵抗について、従来のSiC SBDと比べた。これにより、SiC SJ-SBDはオン抵抗が低く、特に高温環境下において大きな低減効果が期待できることを確認した。これはSJ構造により電界分布が均一化されたことで、オン抵抗が低減されたためだという。
試作した650V耐圧のSiC SJ-SBDについてオン抵抗を測定したところ、従来のSiC SBDに比べ175℃の高温環境下では約35%も低減することが分かった。
従来のSiC SBDとSJ-SBDの断面図[クリックで拡大] 出所:東芝D&S
従来のSiC SBDとSiC SJ-SBDのオン抵抗と温度依存性を比較(東芝D&S調べ)[クリックで拡大] 出所:東芝D&S
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