KDDI総合研究所と東芝デジタルソリューションズは、量子鍵配信(QKD)方式の暗号鍵と33.4Tビット/秒の大容量データ信号を、1心の光ファイバーで80km伝送することに初めて成功した。従来技術に比べ伝送容量は約3倍、伝送性能指数(容量距離積)は約2.4倍という高い性能を実現した。
KDDI総合研究所と東芝デジタルソリューションズは2025年3月、量子鍵配信(QKD)方式の暗号鍵と33.4Tビット/秒の大容量データ信号を、1心の光ファイバーで80km伝送することに初めて成功したと発表した。従来技術に比べ伝送容量は約3倍、伝送性能指数(容量距離積)は約2.4倍という高い性能を実現した。
QKD方式は、伝送中に盗聴しようとすれば量子の状態が変化する。このため盗聴の検知が可能であり、暗号鍵を安全に伝送できる。ただ、QKD方式は微弱な光を用いるためノイズの影響を受けやすい。このため従来は、暗号鍵を伝送する専用の光ファイバーを別途用意する必要があった。
異なる波長を用い、QKD方式の暗号鍵とデータ信号を多重化し、1心の光ファイバーで伝送する技術も研究されてきた。しかし、伝送データが大容量になれば暗号鍵に与えるノイズも大きくなり、大容量化と長距離化の両立は難しかったという。
KDDI研究所ではこれまで、C帯やL帯だけでなく、O帯で大容量データを伝送する技術を開発してきた。そして今回、O帯で伝送するデータ信号が、C帯で伝送するQKD方式の暗号鍵に与える影響を分析。その上でO帯伝送の光パワーや帯域幅を最適化し、伝送後のO帯データ信号を適切に増幅させるためのパラメーターを割り出した。
実験では、QKD方式の暗号鍵を伝送損失が少ないC帯で、大容量のデータ信号をO帯で多重伝送した。この結果、QKD方式の暗号鍵と33.4Tビット/秒のデータ信号を、光ファイバー1心で、80km伝送することに成功した。QKD方式の暗号鍵とデータ通信の両方をC帯で多重伝送する従来方式に比べ、伝送容量や容量距離積を大幅に向上させた。
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