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大容量データと暗号鍵を光ファイバー1心で長距離伝送、KDDI総合研ら伝送容量は3倍、容量距離積は2.4倍

KDDI総合研究所と東芝デジタルソリューションズは、量子鍵配信(QKD)方式の暗号鍵と33.4Tビット/秒の大容量データ信号を、1心の光ファイバーで80km伝送することに初めて成功した。従来技術に比べ伝送容量は約3倍、伝送性能指数(容量距離積)は約2.4倍という高い性能を実現した。

» 2025年03月28日 15時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

QKD方式の暗号鍵と33.4Tビット/秒のデータ信号を80km伝送

 KDDI総合研究所と東芝デジタルソリューションズは2025年3月、量子鍵配信(QKD)方式の暗号鍵と33.4Tビット/秒の大容量データ信号を、1心の光ファイバーで80km伝送することに初めて成功したと発表した。従来技術に比べ伝送容量は約3倍、伝送性能指数(容量距離積)は約2.4倍という高い性能を実現した。

 QKD方式は、伝送中に盗聴しようとすれば量子の状態が変化する。このため盗聴の検知が可能であり、暗号鍵を安全に伝送できる。ただ、QKD方式は微弱な光を用いるためノイズの影響を受けやすい。このため従来は、暗号鍵を伝送する専用の光ファイバーを別途用意する必要があった。

 異なる波長を用い、QKD方式の暗号鍵とデータ信号を多重化し、1心の光ファイバーで伝送する技術も研究されてきた。しかし、伝送データが大容量になれば暗号鍵に与えるノイズも大きくなり、大容量化と長距離化の両立は難しかったという。

 KDDI研究所ではこれまで、C帯やL帯だけでなく、O帯で大容量データを伝送する技術を開発してきた。そして今回、O帯で伝送するデータ信号が、C帯で伝送するQKD方式の暗号鍵に与える影響を分析。その上でO帯伝送の光パワーや帯域幅を最適化し、伝送後のO帯データ信号を適切に増幅させるためのパラメーターを割り出した。

光ファイバー1心による大容量データと暗号鍵の多重伝送の概要[クリックで拡大] 出所:KDDI研究所他

 実験では、QKD方式の暗号鍵を伝送損失が少ないC帯で、大容量のデータ信号をO帯で多重伝送した。この結果、QKD方式の暗号鍵と33.4Tビット/秒のデータ信号を、光ファイバー1心で、80km伝送することに成功した。QKD方式の暗号鍵とデータ通信の両方をC帯で多重伝送する従来方式に比べ、伝送容量や容量距離積を大幅に向上させた。

従来方式と開発した方式による「伝送容量」および「伝送距離」の比較[クリックで拡大] 出所:KDDI研究所他

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