三菱電機は、エッジデバイス上で動作する製造業向け言語モデルを発表した。三菱電機の事業に関するデータの事前学習によって製造業に特化させているので、製造業におけるさまざまなユースケースに適用できるという。さらに、学習データ拡張技術によってユーザーの用途に最適化した回答生成が実現する。
三菱電機は2025年6月18日、エッジデバイス上で動作する製造業向け言語モデルを発表した。同社のAI技術「Maisart(マイサート)」の開発成果だ。
三菱電機の事業に関するデータの事前学習によって製造業に特化させているので、製造業におけるさまざまなユースケースに適用できるという。さらに、学習データ拡張技術によってユーザーの用途に最適化した回答生成が実現する。
三菱電機が発表した言語モデルのベースは、国立情報学研究所 大規模言語モデル研究開発センターが運営し三菱電機も参画するLLM勉強会が公開している日本語継続事前学習済みのモデルだ。そこに同社の製品マニュアルやコールセンター応対履歴などのデータを用いてドメイン特化型の学習を行い、製造業に特化させている。
近年は生成AIの普及でクラウドサーバでの大規模言語モデル(LLM)の活用が拡大する一方で計算コストとエネルギーの大きさが課題になっているが、今回発表した言語モデルはモデル圧縮技術で軽量化し、計算リソースが限られるエッジデバイス上でも動作可能だと確認している。プライバシー保護や機密情報管理の観点からオンプレミス環境で生成AIを利用したいというニーズにも応えられる。
さらに、独自に開発した特許登録済みの学習データ拡張技術も用いている。同技術は、ある入力に対する「望ましい回答」と「望ましくない回答」のペアを疑似的に自動生成し、望ましい回答を出力しやすい言語モデルの学習用データを充実させるものだ。さらに、ユーザーが個別に保有する用途別データを用いた追加学習も行える。これによってユーザーの用途に最適化した回答生成が可能な言語モデルを構築し、個別のドメインやタスクを考慮したニーズに対応できる。三菱電機のファクトリーオートメーション(FA)製品に関する知識を問う評価では、75%を超える正解率を達成したという。これは、GPT-4o(正解率52.0%)を上回る結果だ。
三菱電機は、2026年度中の同言語モデルの製品適用を目指している。今後は産業機器やロボットなどのデバイス上で言語モデルを動作させるユースケースの検討や社内外での実機実証を進めていくという。用途としては、スマートファクトリーやエッジロボティクス、エネルギー制御などの分野を想定している。
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