Nordic Semiconductorが、極小機械学習(ML)モデルを完全自動生成するソリューションを手掛けるNeuton.AIを買収する。Nordicは「資源に制約のあるデバイスに対してもスケーラブルかつ高性能なAIを提供する、新たなエッジMLの時代が幕を開ける」としている。
Nordic Semiconductor(以下、Nordic)は2025年6月17日(ノルウェー時間)、エッジデバイス向けの完全自動化TinyML(機械学習)ソリューションを手掛けるNeuton.AIの知的財産および中核技術資産を買収したと発表した。Nordicの超低電力ワイヤレスSoC(System on Chip)「nRF54シリーズ」と、Neuton.AIのソリューションを組み合わせることで「資源に制約のあるデバイスに対してもスケーラブルかつ高性能なAIを提供する、新たなエッジMLの時代が幕を開ける」としている。
Nordicによると、TinyMLチップの出荷額は2030年までに59億米ドルに達すると予測されているという。同社はこの成長市場に向け、予知保全、スマート健康モニタリング、プロセス自動化、ジェスチャー認識、次世代ウェアラブル、IoT機器などさまざまな用途に対応する拡張可能なAI/MLツールキットを提供する体制を整えている。
今回、買収を発表したNeuton.AIは、モデルサイズ5Kバイト未満という極小サイズのMLモデルを完全自動で生成できるプラットフォームを有している。Nordicは「これは、他手法と比べて最大10倍小型かつ高速だ。専門的なチューニングやデータサイエンスの知識は不要で、8/16/32ビットMCU上での迅速な実装が可能だ」と説明。事前定義されたアーキテクチャなしで、極小モデルを自動構築するニューラルネットワークフレームワークによって、高精度/省電力/高速なAI機能を、消費電力やコードメモリなどのデバイス資源を最小限に抑えつつ、コンシューマー/ヘルスケア/産業分野のエッジアプリケーションに提供できるとしている。
Neuton.AIのプラットフォームは上述のnRF54シリーズだけでなく、全てのNordicワイヤレスSoCに対応する予定で、NordicのCEO、Vegard Wollan氏は「Nordicの低電力ワイヤレス技術とNeuton.AIの最先端TinyMLプラットフォームを統合することで、常時稼働し、AIを活用する新しいクラスのデバイスの開発を、これまで以上に迅速/小型/高効率に実現できる」と買収によるシナジー効果を強調している。
今回の買収には、Neuton.AIの全ての知的財産権および選定資産、13人の高度なスキルを持つエンジニアとデータサイエンティストからなるチームが含まれる。買収額は非公開だ。なお、Neuton.AIのブランドとプラットフォームは、統合初期段階も運営を継続し、「既存ユーザーやパートナーへのサービスに影響が出ないようにする」としている。
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