同様に重要なのが、中国ファブによる価格圧力だ。これらのファブは、成熟したレガシーノードで製造されたウエハーの市場シェアを獲得するために、積極的に生産能力を拡大している。厳しい競争と低い平均販売価格は、TSMCがGaNウエハー事業からの撤退を決めた原因の一つと言えるだろう。
言い換えれば、TSMCは現在の収益源を守るのではなく、長期的な成長を目指している。世界最大の専業ファウンドリーである同社は、効率性と成長を強化するため、先端ノード向け大口径ウエハーへの注力を強めている。
TSMCは、市場状況を慎重に検討した上で今回の決定を下したとしており、これは生産効率を最適化するという同社の長期戦略に合致するものだと述べている。TSMCによれば、6インチウエハー工場の段階的な廃止は、財務状況に影響を及ぼさないとしている。
TSMCは、世界地政学の泥沼を慎重かつ巧みに乗り越える中で、こうした動きを取っている。生産能力が高い200mmおよび300mm工場へのリソースの移転は、TSMCが先端ノードと最先端のチップ製造技術に注力していることを示している。これは、ますます不安定化する地政学的環境において、台湾の競争力にもつながっている。
これはまた、1990年代にIntelの共同創業者であるAndy Grove氏が唱えた「パラノイア(心配性)だけが生き残る(Only the Paranoid Survive)」という格言をTSMCが実践していることも示している。(Intelにとって)皮肉なことに、ファウンドリー事業におけるIntelのライバルが、非常に競争の激しい半導体業界において、“心配性”という気質と常に警戒することの重要性を示しているのだ。
【翻訳、編集:EE Times Japan】
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