NTTは、X帯と呼ぶ新たな超長波長帯を開拓し、波長帯域が27THzという広帯域波長分割多重(WDM)信号を用いて、伝送容量160Tビット/秒で1040kmという長距離光伝送の実証に成功した。
NTTは2025年8月、X帯と呼ぶ新たな超長波長帯を開拓し、波長帯域が27THzという広帯域波長分割多重(WDM)信号を用いて、伝送容量160Tビット/秒で1040kmという長距離光伝送の実証に成功したと発表した。この技術を応用すれば既存の光ファイバーを用い、東名阪間の距離をカバーしながら、ファイバー1芯当たり容量が従来の10倍超となる大容量光伝送システムを実現できるという。
高品質の動画像ストリーミングサービスや生成AIなどの普及により、データトラフィックは増え続けている。このため基幹となる光ファイバー伝送システムでも、送受信されるデータ量の増加に対応できるよう、さらなる大容量化などが求められている。
こうした中でNTTは、周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)型波長帯一括変換技術を適用した「超広帯域光増幅中継器」を新たに開発した。具体的には、PPLN導波路の変換帯域をX帯まで拡張し、U+X帯とC+L帯のWDM信号を相互に一括変換する波長帯変換器を構築した。また、S帯とC+L帯の間を変換する波長帯変換器も新たに開発した。
これらの変換器と既存のエルビウム添加光ファイバー増幅器(EDFA)を組み合わせることで、S帯からX帯までをカバーした27THz帯域の波長多重信号を一括して増幅できる光増幅中継器を実現した。
また、パワー遷移(誘導ラマン散乱)を積極的に利用して、X帯における光ファイバーの損失を実効的に抑えた。これにより、X帯でのWDM信号伝送を可能にした。実験では、U帯とX帯の長波長帯に加え短波長帯のS帯も利用。さらにC帯とL帯も加え27THzの信号を送信した。送信条件については、ガウス雑音モデルと呼ばれる信号品質推定モデルを適用したシミュレーションの結果に基づき最適化した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.