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創刊前の20年間(1985年〜2005年)で最も驚いたこと:「高輝度青色発光ダイオード」(前編)福田昭のデバイス通信(502) EETimes Japan 20周年記念寄稿(その3)(3/4 ページ)

» 2025年09月17日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

青色LEDの研究開発コミュニティから忘れ去られた「窒化ガリウム(GaN)」

 そのような中で名古屋大学の赤崎勇氏と天野浩氏らの研究グループ(パートナー企業は豊田合成)と、日亜化学工業の中村修二氏らの研究グループが、GaNによって画期的な研究開発成果を1980年代後半から1990年代初頭にかけてたたき出したのです。1980年代に青色LEDの候補材料としてGaNを選択することは「勝つ見込みの極めて少ないギャンブル」というよりも、ほとんど無視されたような状態でした。

 赤崎勇氏は、窒化物半導体による光デバイスのパイオニアであり、1973年に「この“前人未到”の『GaN 系ナイトライドのp-n接合による青色発光デバイスの実現』への挑戦を“ライフワークとする”ことを決意した」(出所:赤崎、「夢の青色発光デバイスの実現を語る」、『応用物理』、第73巻、第8号、p.1062、2004年)。松下技研(入社は1963年、GaN研究は1973年〜1981年)から名古屋大学(1981年以降)へと研究環境を変えながらも、GaN青色発光素子の研究開発を継続してきました。

 その赤崎氏は応用物理学会誌『応用物理』の創刊75周年記念特集インタビュー(2007年8月号、p.895)でGaN研究に対する関心の低さを、以下のように述べています。「1978年のデータをいろんな事情で1981年に発表しました.ずいぶん関心を引くだろうと思っていたのですが,まったく反応がなかった.そのころGaN には誰一人見向きもしなくなっていたんですね.私はつくづく,「ああ,一人なんだな」と思いました.」。また前述の「夢の青色発光デバイスの実現を語る」では、「・・・種々の事情で2年後(筆者注:2年後とは1981年の意味)に国際会議に発表したが,最後まで好敵手であったPhilips社もすでにGaN研究から撤退したこともあり,関心を示す人はほとんどいなかった.」(p.1062)と記述しています。

 補足すると、1978年のデータとは松下技研在籍時に開発したフリップチップ構造のGaN MIS(金属・絶縁物・半導体)型青色LEDの研究成果であり、1981年の発表とは、神奈川県の大磯で1981年9月に開催された化合物半導体の国際学会「9th International Symposium on Gallium Arsenide and Related Compounds」を指しています。なお発表論文(pp.479-484)の著者は赤崎氏を含めて4人であり、赤崎氏を除く3人の所属は松下技研、赤崎氏の所属は名古屋大学となっています。

高輝度青色発光ダイオード(青色LED)開発の主な歴史(前編)

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