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名古屋大ら、溶液成長法による6インチp型SiCウエハー試作に成功6/8インチn型SiCウエハーも

オキサイドパワークリスタルとMipox、UJ-Crystal、アイクリスタル、産業技術総合研究所(産総研)および名古屋大学の開発グループが、溶液成長法とシミュレーション技術を活用し、6インチp型炭化ケイ素(SiC)ウエハーおよび、6インチ/8インチn型SiCウエハーの試作に成功した。

» 2025年10月07日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

次世代の超高耐圧IGBTの実現に向け

 オキサイドパワークリスタルとMipox、UJ-Crystal、アイクリスタル、産業技術総合研究所(産総研)先端パワーエレクトロニクス研究センターおよび名古屋大学未来材料・システム研究所の開発グループは2025年9月、溶液成長法とシミュレーション技術を活用し、6インチp型炭化ケイ素(SiC)ウエハーおよび、6インチ/8インチn型SiCウエハーの試作に成功したと発表した。従来手法では難しかったp型SiCウエハーの大口径化を可能にしたことで、次世代の超高耐圧IGBTの実現が容易になるとしている。

SiCに関する国際会議「ICSCRM2925」に展示した試作品。左から6インチn型ウエハー、8インチn型ウエハー、6インチp型ウエハー[クリックで拡大] 出所:名古屋大学他

 SiCは次世代のパワー半導体材料として注目されている。需要のさらなる拡大には、ウエハーの大口径化や結晶欠陥の低減による高品質化が必須となっていた。こうした中でp型SiCウエハーは、従来の昇華法だとドーパント制御が難しく、大口径のウエハーを製造するには課題もあったという。

 名古屋大学はこれまで、溶液成長法により6インチ結晶成長ができる基本条件を見い出してきた。溶液成長法とは、溶液の溶け込んだ溶質を種結晶上に析出させて、結晶成長させる方法である。昇華法に比べ原理的に欠陥が少なく、高品質な単結晶の育成が可能だという。

 今回の研究ではこの溶液結晶法を基盤技術とし、「デジタルツイン」と呼ばれるシミュレーション技術を活用することで、6インチp型Siウエハーと6インチ/8インチn型SiCウエハーの試作に成功した。

 具体的には、名古屋大学とアイクリスタルが、温度場や濃度場、流れ場の制御方針について、シミュレーション技術を用いて最適な条件を求めた。その上でUJ-Crystalの知見と組み合わせ、結晶成長の基本レシピを確立させた。さらにオキサイドパワークリスタルが、複数台の育成装置を用いて結晶成長を実証するとともに、事業化に向けた量産プロセスを開発した。

 今回の研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)グリーンイノベーション基金事業「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトの支援を受けて実施した。

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