物質・材料研究機構(NIMS)は東京大学や名古屋大学と共同で、横型熱電変換性能が極めて高い新材料「熱電永久磁石」を開発した。この材料を用いて試作した熱電モジュールは、「横型モジュールとして世界最高の電力密度を実現した」という。
物質・材料研究機構(NIMS)は2025年4月、東京大学や名古屋大学と共同で、横型熱電変換性能が極めて高い新材料「熱電永久磁石」を開発したと発表した。この材料を用いて試作した熱電モジュールは、「横型モジュールとして世界最高の電力密度を実現した」という。
従来の熱電モジュールは、熱流と同じ向きに電流が発生する「縦型」の熱電効果が用いられてきた。この効果はゼーベック効果と呼ばれ、材料性能指数(zT)が高いという特長がある。一方でモジュール構造が複雑という課題もあった。このため、構造を簡略化できる「横型熱電材料」を用いたモジュールが注目されてきた。しかし、横型熱電材料にも問題はあった。それは縦型熱電材料に比べzTが極めて低いという点である。
研究グループは今回、サマリウムコバルト(SmCo5)磁石とビスマスアンチモンテルル(Bi0.2Sb1.8Te3)化合物を、交互に積層して焼結結合させ、斜めに切断した人工傾斜積層体「熱電永久磁石」を開発した。この熱電永久磁石は室温でzTが0.2となった。このzT値は従来の横型熱電材料に比べ2桁も高いという。
実験では、新たに開発した熱電永久磁石を用いて熱電モジュールを試作し、発電試験を行った。この結果、温度差152℃(温度勾配20.7℃/mmに相当)の時に、最大電力密度56.7mW/cm2を達成した。印加温度勾配当たりの値に換算すると、横型モジュールとして世界最高値になるという。しかも、市販の縦型モジュールに匹敵する性能である。
今回開発した熱電モジュールのサイズは1〜2cmであったが、今後はさらなる大判化によってワット級の横型熱電発電を目指すことにしている。
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