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入学した瞬間終わったわ――「講義が英語」なんて一言も聞いてない!リタイア直前エンジニアの社会人大学漂流記(4-1)(1/4 ページ)

さて、いよいよ入学式を迎え、本格的に社会人大学院生の生活が始まりました。しかし入学式当日から波乱の予感が満載です。仕事との両立に頭を悩ませ、研究室からは何の連絡もない。そんな私にさらに追い打ちをかけたのが、講義が全て英語で行われるという事実でした。私は「英語に愛されないエンジニア」という、偉大な代名詞を持っているというのに……!

» 2026年04月30日 11時00分 公開
[江端智一EE Times Japan]
リタイア直前エンジニアの社会人大学漂流記

3年間の休載を経て戻ってきました。休載していた理由は、私はリタイア(定年退職)間際だったにもかかわらず、「MAS(マルチエージェントシミュレーション)」を研究すべく、社会人のまま大学院博士課程に突っ込んでいったからです。なぜ“そんなこと”になったのか――。そして私をそこまでさせた「MAS」とは何なのか。社会人大学院生の実態を赤裸々に語りつつ、MASを技術的に深掘りしていきます。
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「あなたと同じ学生です」

 学生のみなさん。私が通り過ぎるときに頭を下げるのを止めてください。私は、講師でも教授でもありません。あなたと同じ学生です。

――と、思うような場面が、在学中、何度もありました。まあリタイア直前のエンジニアが、その風体で、大学構内を闊歩していれば仕方がないとは思います。その辺の教授陣より、私の方がはるかに高齢ですから(加えて、私は目つきも悪い)。

 大学内で「私の面が割れていない」ことも一因だったのかなと思います。私が大学に出席するのは、毎週金曜日午後の、全体ゼミの発表の時だけで、授業はリモート学習が多かったですから(私が入学したのは、新型コロナウイルス災禍の収束時くらいでした)。

 社会人大学院生にも授業があります。そして取得しなければならない必須の単位があり、そして、GPA(Grade Point Average)も付いてきます(GPAとは評価数値で、昔で言う単位ごとの評価で、優(A)=4、良(B)=3、可(C)=2、不可(F)=0 (さらに、横浜国立大学には優の上に、秀(4.5)もあります)。“不可”の場合は再履修が必要になります)。就職活動をしている学生さんにとって、GPAは、TOEICと同様に、点数が就職に影響してきますが――社会人大学院生(私)にとっての価値は、今でもよく分かっていません。

 さて、今回は、若者ではない、リタイア直前エンジニアの大学院生のキャンパスライフのスタート時のお話(戸惑い)についてお話します。

キャンパスが遠すぎる……!

 2022年10月4日――私は、最寄り駅である、相鉄新横浜線、相鉄・JR直通線羽沢横浜国大駅から、酷暑の中を歩きながら、横浜国立大学常盤台キャンパスの教育文化ホールに向かいました。“秋”とは思えない酷暑日でした。照り付ける太陽が痛かった。もう、あのころから既に日本の“四季”は“二季(夏と冬)”になっていたような気がします。

 横浜国立大学常盤台キャンパスは、『高台にある、広い・坂が多い・森の中・東京ドーム約9個分の広大なキャンパス』とパンフレットには書いてあります。

出典:https://shisetsu.ynu.ac.jp/gakugai/shisetsu/2campus/syasin/syasin.html

 しかし、これを別の言い方をすれば、

――「毎日、インターバルトレーニングを強いられる隔離型の秘密研究施設

のようにも見えます。まあ、”ロスアラモス研究所” (日本に投下された原爆が設計・開発された中心施設) レベル、とまでは言いませんが……。

 最寄り駅から歩き出すと、体力は簡単に削られ、キャンパスに入ってからも坂道が続く。ようやく目的の建物にたどり着く頃には、講義の前にひと仕事終えたような疲労感。さらに一度キャンパスの中に入れば、周囲に商業施設はほとんどなく、学生は自然とその空間にとどまり、講義・研究・人間関係の全てがその内部で完結。

 その一方で、大学周辺の住民は、学内にあるコンビニのイートインで町内会の打ち合わせを行い、ペットの犬を連れてキャンパス内を自由に歩き回る。まさに文字通りの『オープンキャンパス』。気にしなければ、ほぼどこからでも出入りが可能で、正門を除けば守衛所もなく、セキュリティチェックもない。

 天然の要塞によって“閉じられて”いながら、地域住民にまで“開かれた”大学キャンパス――この大学のキャンパスの魅力(2面性)を知るには、実際に、羽沢横浜国大駅、三ツ沢上町駅、または和田町駅から「歩いてみる」ことが必要です。横浜駅からバスorタクシー? 甘えてはいけません。それでは、この大学キャンパスの真価に1mmも近づけません。

 『うん、この大学、好きになれるかもしれない』――などとのんきなことを言っている場合ではありませんでした。入学式会場に向かう途中にも、灼熱の太陽光線は容赦なく襲いかかってきます。新型コロナの外出自粛の2年間、ほぼ外に出ることのなかったリモートワーク生活で、体力はほぼゼロ。そんなリタイア直前の完全インドア系エンジニアが、炎天下の坂道に放り出されたわけです。

 汗はダラダラと滝のように流れ、呼吸はゼーゼーと困難に陥り、「これ、入学式に出る前に倒れるんじゃないか」と、割と本気で思いました。それでも――なんとか、熱中症で救急搬送されることもなく、入学式のホールにたどり着いたのでした。

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