今回は「MATSim」の解説をいったんお休みします(なぜなら恐ろしい分量になり、編集者が青ざめるから)。代わりに、私がなぜ「MAS(マルチエージェントシミュレーション)」にたどり着いたのか、そして私にとってMASが持つ可能性とは何なのかをお話したいと思います。
3年間の休載を経て戻ってきました。休載していた理由は、私はリタイア(定年退職)間際だったにもかかわらず、「MAS(マルチエージェントシミュレーション)」を研究すべく、社会人のまま大学院博士課程に突っ込んでいったからです。なぜ“そんなこと”になったのか――。そして私をそこまでさせた「MAS」とは何なのか。社会人大学院生の実態を赤裸々に語りつつ、MASを技術的に深掘りしていきます。
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さて、ここから後半になります。本来であればMATSim(本連載の対象であるマルチエージェントシミュレーション[MAS]のツール)の解説に入るところですが、その前に、私とMAS(マルチエージェントシミュレーション)に関わる話を少しさせてください。ここから先は、何かの分野全体を代表する議論ではありません。あくまで、私自身が現場に関わる中で感じてきた、かなり偏った問題意識です。言ってしまえば「私の思い込み」です。ただ、私はその「思い込み」を、どうしても捨てきれないのです。
この図は、よくある分析の流れを示しています。調査をして、整理して、傾向を見つけて、「分かりました」とまとめる。これは極めて重要な営みですし、これがなければ何も始まりません。
ただ、ここで私は、いつも一つだけ引っ掛かります。
「で、その先はどうなるのか?」という疑問です。
もちろん、その話は本来の研究のスコープ外であるとするのは正しい態度だと思いますし、軽々しく未来を語るべきではない、というのも理解しています。ただ、私個人としては、「分かった」で止まってしまうことに、少し物足りなさを感じているのです――まあ、これは完全に私の性格の問題だろうなぁ、と分かってはいるのですが。
一方で、別の面を見てみましょう。
上の図は、さまざまな場所に存在するデータの例を並べたものです。公開情報やこれまでの業務経験などをもとに、データが蓄積されている地域の一例を示しています(私が関わった案件も一部含まれています)。
ここで言いたいことは一つだけです。「データは、既にかなり存在している」ということです。しかも、それぞれのデータは丁寧に収集されており、一定の価値を持つものです。
ただし、それらは基本的に、
ように見えます。この点が、私は気になっているのです。
この図では、データを大きく3つに分けて示しています。
かなり乱暴な整理ではありますが、「人」「数値」「空間」という3つの側面からデータがそろっている、と見ることもできます。もちろん、この分類自体が単純化しすぎていることは承知していますし、これで全てを説明できるわけではありません。
ただ、少なくとも私には、「分析に必要な情報は、ある程度そろっている」ように見えるのです。
ここで言いたいのは「足りないものがある」という話ではなく、むしろ逆で、「これだけそろっているのに、それぞれが個別に使われて完結してしまっている」という点が引っ掛かるということです。
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